ボケを制し、水中マクロを制す ~人はそれをメルヘンと呼ぶ、らしい~

この記事は6分で読めます


 

こんにちは、上出です。

 

前回の記事では、

「絞り」と「ボケ」の関係について

解説させていただきました。

 

(参照:水中写真の絞りとボケをコントロールする)

 

 

今日はさらに一歩踏み込んで、

 

「距離」をコントロールし思い通りのボケを作る方法

 

について紹介します。

 

 

前回、

 

①f値を小さくすると(f2.8など)被写界深度が浅くなる(ボケやすくなる)

センサーサイズの大きいカメラほどボケやすい(同じ画角なら)

 

という解説をしたのですが、

実は「ボケ」を構成する要素はあと2つあります。

 

 

 

焦点距離

 

 

コンデジを使っていると気にしないと思いますが、

 

ミラーレス一眼や一眼レフを使っている方は

「Nikonの○○mmマクロレンズで撮影してます!」

みたいな話をよくしています。

 

「○○mm」というのが焦点距離です。

 

今日のメインテーマではないのでざっくり解説しますが、

 

数字が大きい(100mmとか)=望遠=ボケやすい

数字が小さい(15mmとか)=広角ボケにくい

 

ということになります。

 

つまり同じ「マクロレンズ」でも、

60mmマクロよりも105mmマクロの方がボケやすい

ということですね。

 

詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧下さい。

(前回からNikon頼みが多い気が…笑)

参照:Nikon公式HP

 

 

 

 

「カメラ」と「被写体」と「背景」の距離

 

 

さて、今日のポイントはここです。

 

以下の点を徹底すればどんな撮影機材でも

ある程度ボケを作ることができます。

 

 

・「カメラ」「被写体」の距離を短くする

被写体となる生物等にグッと寄る

 

・「被写体」「背景」の距離を長くする

背景となる岩や珊瑚から離れている生物を見つける

背景と生物の距離が長くなるアングルから撮影する

 

 

これがどんなカメラ・レンズを使っていても当てはまる、

背景をボカすための最も重要な要素です。

 

「②センサーサイズ」と「③焦点距離」は

すぐに変えられない場合が多いと思いますので

ここではいったん置いておくとして、

 

絞り」と「距離」をコントロールして

思い通りのボケを作るにはどうしたら良いのか?

 

について、ここから解説していきます。

 

(D7000 + Nikkor AF-S 105mm Micro  f4.0 1/160秒 ISO100)

 

 

さて、ここまでのおさらいですが、

 

・f値をできるだけ小さくして

・被写体と背景が遠くなるアングルから構えて

・できるだけ被写体に寄って撮影する

 

と最もボケやすくなるというお話でしたね。

 

それを忠実に実践したのが上の写真です。

 

この写真を撮影したのは2013年なのですが、

この頃は水中で一眼レフを使い始めてまだ間もない頃で、

とにかく何でもかんでもボカして撮影していました。笑

 

 

ほぼ最短撮影距離での撮影だと思いますし、

できるだけ下からカメラを構えて

水底が背景にならないようにしています。

 

実効f値も4.0なのでほぼ開放ですね。

(Nikon以外のカメラならf2.8と表示されるはずです。)

 

こういう条件なら、

背景は間違いなくボケます。

 

 

ちなみに、今まで色んなところで

 

「目の高さを合わせて下から煽り気味で撮ると

魚の可愛さや臨場感を表現しやすいですよ!」

 

というお話をしてきましたが、

これは「被写体と背景の距離をとる」

という意味でも重要だったわけです。

 

特にウミウシやハゼなど

泳いでいない生き物を撮影する時には、

 

何も考えずに上から見下ろして撮影すると、

被写体と背景(岩や砂地)との距離が短すぎてボケません。

 

時にはドロップオフで壁に張り付き

無理やり煽って撮るタフさも必要です。笑

 

(D750 + Nikkor AF-S 105mm Micro  f4.5 1/200秒 ISO160)

 

 

 

「いやいや上出さん、いくら煽ろうがアングルを工夫しようが、

どうしても背景との距離がとれない場面もあるじゃないですか…」

 

そんな声が聞こえてきました。笑

 

おっしゃる通りで、

確かにそういうケースもあります。

 

 

それでも背景をボカしたいなら、

やはり被写体にできるだけ近づいて、

絞りを開放(最小のf値)で撮影するしかありません。

 

例えば、下のハナヒゲウツボを撮影した時は、

すぐ後ろにある岩を背景にせざるをえなかったので、

 

絞り開放+最短撮影距離で

できる限り背景がボケるようにしました。

 

 

こういうケースでは、

 

主役が白飛びしない範囲で

ストロボを少し強めに発光させ、

背景を明るい色にまとめる

 

というのが、

僕が良くやる作戦です。

 

(D750 + Nikkor AF-S 105mm Micro  f4.2 1/250秒 ISO160)

 

 

ただ、この撮り方だと

ウツボの「目」以外はほぼボケているので、

 

見る人によっては、

 

もはやこの生物が何だか良くわからん

 

ということになるかもしれません。笑

 

なので、背景を無理にボカそうとせず、

もう少し絞ってあげてウツボの体全体に

ピントが合うようにしても良いと思います。

 

この辺は好みの問題ですので正解はありません。

 

 

 

さて、ここまでの作例は全て絞り開放付近でした。

 

でも、絞り込みたい、

つまりf値を大きくしたい時もあります。

 

というかむしろ、マクロ撮影の世界では

「寄ったら絞る」が定石とされているんですよね。

 

ボケすぎて何を撮りたいのかわからなくなるから

(上のハナヒゲウツボのような感じでしょうか…)

 

というのが理由だそうです。

 

僕は

 

「そんな事ないだろ」

 

と思ってしまうのですが。笑

 

 

定石はさておき、

 

・動きが早くて開放だと中々ピントが目に合わない

・しっかり顔や体全体のディテールも描写したい

・開放だと解像感を得られにくい体(目)をしている

 

などのケースでは、

僕も絞り込んでマクロ撮影を行います。

 

 

では絞りを

 

f8,9,11…

 

と絞っていくと、

背景は全くボケないのでしょうか?

 

そんなことはありません。

 

もちろん使用する撮影機材にもよりますが、

距離さえ適切にコントロールすればボケは作れます。

 

 

(D750 + Nikkor AF-S 105mm Micro  f13 1/250秒 ISO200)

 

 

アオギハゼの美しい体全体を写したかったので、

かなり絞り込んで撮影しました。

 

後ろの岩からできるだけ離れて

ホバリングしている個体を狙い、

被写体にグッと寄って撮影しています。

 

 

それから、この写真では

ストロボもかなり強めに焚いています。

 

アオギハゼやセナキルリスズメダイのように、

体に白い部分が無い魚は白飛びしにくいので、

ライティングも大胆に攻めてみると面白いですよ。

 

 

 

ここまで「いかに背景をボカすか」

という観点から解説を進めてきてしまいましたが、

もちろん背景はボカすことが全てではありません。

 

美しい背景を活かした作品にするため、

絞り込んで背景をくっきり描写する事もあります。

 

背景の作り方については長くなりますので、

また別の機会に解説させていただきますね。

 

 

今日は、

背景を綺麗にボカすためのコツとして、

 

 

・被写体にできるだけ寄り、カメラと被写体の距離を短くする

 

・背景となる岩などから離れている被写体を見つけ、

被写体と背景の距離が長くなる位置からカメラを構える

 

・ストロボを強めに発光させて、背景を明るい色でまとめる

 

 

というテクニックを紹介させていただきました。

 

少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

 

今日もここまで読んで下さりありがとうございました!

 

 

 

ps.

 

 

僕の水中写真を見て下さった方から、

 

「素敵な水中メルヘンですねー」

 

と声をかけていただくことがたまにあります。

 

もちろん肯定的なご意見だと思うので

素直に喜んでいれば良いのでしょうが、

 

何となく違和感があります。

 

 

「主役以外の部分丁寧に表現する」

 

という意味では100%共感できるのですが…

 

「メルヘン」という響きが男子にはちょっと…笑

 

 

というわけで、

僕はメルヘンが好きでも嫌いでもありませんし、

得意だとも苦手だとも思っていませんが、

 

最近よく耳にするので、

タイトルに入れてみたのでした。笑

 

 

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  1. お久しぶりです。

    やっぱり、水中マクロはメルヘン傾向が強いですね。
    私はメルヘンは昔よくやってましたが、ある写真を見てからはなるべくやらないようにしています。
    インスタに上げてるのはほとんどがかなり昔の写真で、最近は「お遊び」で撮るくらいです。

    割と好きなんですが、世界的に「Photograph」としてはあまり認められていないようですね。
    写真はどう表現しようが自由なのですが、絶対的に受け入れられない世界と言うものがあるのも事実のようです。
    (どういう世界かは推して知るべしということにしておきます)

    このメルヘンチックな写真は、日本ならではの進化?だと思います。
    ガラパゴス化とも言えると思います。

    個人的には、もっとも解像感の良いF値、適切なSS、ISO感度で基本を抑えることが肝要かと。
    レンズによってどのくらいの絞りがもっとも美しく撮影できるか知らない人が沢山いると思います。

    いわゆる○○メルとかは、アマチュア写真家がプロのやらない方向に走った結果でしかなく、
    まさに「お遊び」でやっているようなものだと思っています。

    否定するつもりは全くありませんが、写真を始めて間もない人がこれにハマると、おそらくマトモな写真は撮れなくなるだろうと思います。

      • 上出 俊作
      • 2017年 4月19日

      お久しぶりです。
      コメントありがとうございます!

      divedogさんは「メルヘン」に色々と思うところがおありなんですね。

      僕自身はメルヘンという言葉を使う事が無いのですが、
      何故だか僕の所には「メルヘンは苦手なんですが…」
      という方からよくメッセージが届きます。笑

      divedogさんが危惧されていることは良くわかりますよ。

      水中写真や一眼にハマるきっかけとしてはありだと思いますが、
      一度基本を押さえておかないと成長の伸びしろがないのもまた事実だと思います。

      フンワリ撮るのは良いけど、ピントはびしっと決めて画面を引き締めようよ!

      と、良く心の中で呟いています。笑

      ただ、おっしゃる通りで日本ならではの進化というのは面白いですよね。

      僕自身は、「ふんわり」とか「メルヘン」とかいう事よりも、
      色使いの繊細さや曲線の使い方が日本人らしいのかななんて思ったりします。

      海外市場の開拓はひとまず敬愛する鍵井さんにお任せして、笑

      僕は引き続き、人の心に彩りを添えられるような写真を
      自分なりに考えながら撮り続けていこうと思います。

      divedogさんの素敵な写真も、blogやInstagramでどんどん見せて下さいね!

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管理人 ; 上出 俊作 (水中写真家)

沖縄本島を拠点に活動している水中写真家です。

これまで、写真集の出版や写真展の開催などを通して、海の魅力を伝えるべく水中写真家として活動してきました。

撮影スタイルという程でもないですが「日常を切り取る」という事が僕にとっての大事なテーマです。

珍しい生き物を追いかけ回したりせず、水中の生き物たちとかくれんぼやにらめっこをして遊びながら、のんびりと撮影しています。

「水中写真を通して共に成長し合える仲間と出会い、一緒に豊かな人生を歩んで行きたい。」

そんな思いから生まれたのが、このブログです。

自分と真剣に向き合う事の大切さを教えてくれた水中写真に、日々感謝しています。
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