和歌山水中撮影レポート(日高編)~濁った海でクリアな写真を撮る~

 

こんにちは、上出です。
7月の下旬に、初めて和歌山で潜る機会をいただきました。

今回は行く前から、
「上出さんが和歌山の海をどう撮るか楽しみにしています!」
と、にこにこプレッシャーをかけてくれる方がたくさんいました。
嬉しい限りです。笑

沖縄に帰ってきてから、自分なりに精一杯撮った写真を見直してみて、
「これがみんなの参考になるんだろうか…」と正直ちょっと不安だったのですが、
セミナー・ツアー参加者の方用のfacebookグループの方でレポートを上げたところ、
皆さんから「参考になった」というお言葉をいただけました。

なので、このブログでも、和歌山の撮影録を書こうと思います。
初日に潜った「日高」と、2日目・3日目に潜った「みなべ」ではだいぶ環境が違ったので、

①和歌山水中撮影レポート(日高編)~濁った海でクリアな写真を撮る~
②和歌山水中撮影レポート(みなべ編)~本州の海で綺麗な背景を探す~【仮】

と、2回に分けて報告させていただきますね。

第1回の今日は「浮遊物の多い環境でどう撮るか」という話です。
「和歌山でも綺麗な背景の水中マクロが撮れるのか?」という話は次回詳しくお伝えします。


(D850 + 105mm micro + UCL-90 + Z-330   f11 1/250秒 ISO64)

初日の日高では、計2本潜りました。
で、先に言いますが、2本ともミジンベニハゼしか撮っていません。

なので伝えられることもそんなに多くないのですが…
せっかくなので、1本ずつ、時系列で振り返ろうと思います。

 

■1本目:ミジンベニハゼ成魚

日高は普段からあまり透明度が良くないとは聞いていました。
それなりに覚悟はしていたのですが、エントリーしてみてちょっと焦りました。

僕の感覚では、透視度2~7mくらいだったと思います。
こんなに濁った海で撮影したのはいつぶりでしょうか。

打ち合わせ通り、1本目は牡蠣殻に入ったミジンベニハゼを紹介してもらいました。
当たり前なのですが、自然に落ちている牡蠣の殻なので、特別綺麗ではないです。
普段ナカモトさんのビンをせっせと磨いている自分の不自然さが浮き彫りになります。笑


(歯ブラシでピカピカに磨いているナカモトイロワケハゼの住居。カラフルな瓶をネット通販で探すのが数少ない趣味。和歌山の写真ではありません。)

牡蠣殻の住まいは、綺麗ではないと言っても、沖縄で見ることのない環境だったので、出会えて素直に嬉しかったです。
ひとまず住まいの環境も入るように、105㎜マクロの最短撮影距離付近で撮影してみました。

が、しかし…

浮遊物がたーくさん写りこんだだけでなく、全体的にモヤっとした描写になってしまいました。
水底が泥っぽくて、そこからモヤッとしたものがフワッと浮いていたんですね。

「この距離感では無理だ」と早合点し、クローズアップレンズをつけることにしました。

被写体のミジンベニハゼは成魚だったので大きさ的には付けなくていいのですが、クローズアップレンズをつけると被写体に5㎝の所まで寄ることができます。
「レンズと被写体の間の浮遊物やモヤモヤをできるだけ少なくしてクリアに撮りたい」という意図で装着したという事です。

ギリギリまで被写体に寄って、ストロボをほぼ真横から回り込ませて撮影したところ、浮遊物の写り込みはだいぶ減らせました。
しかしどうも、被写体の顔の真ん中の色が抜けているように感じたので、ストロボをレンズに近づけて、少し正面寄りから光を当ててみたのですが…
今度はやはり浮遊物が写り込んでしまいました。

「まあしゃあない、現像の時にゴミ消しするか」と割り切って撮影を続けたのですが、想像通りタフなゴミ消しになりましたね。
というか、ゴミ消しでなんとかなるレベルのカットは2~3枚しかありませんでした。

そんなこんなで、なんとか形になった写真がこちらです。
ずっと見ていると、ジョーフィッシュに見えてきます。笑


(D850 + 105mm micro + UCL-90 + Z-330   f13 1/250秒 ISO64)

この日一緒に潜った方々も、ミジンベニハゼを撮ってくださいました。
お写真が潜水屋DAIKIさんのブログに掲載されていますので、是非見てみてください。

潜水屋DAIKI ログブック

上から2番目の写真が、僕が撮影したのと同じ牡蠣殻です(一番上は僕が2本目で撮った写真)。
そして上から3番目の写真は、僕は撮っていない、ペットボトルに住んでいたミジン君です。

お二人ともD850+105㎜マクロで、クローズアップレンズは使っていません。
それなのに、ゴミが全然写り込んでいません。

正直、ビックリしました。
撮影しているところを見ていないので細かい事はわかりませんが、ストロボの位置や角度を工夫して、自分で砂泥を巻き上げないように注意すれば、ここまでクリアに撮れるんですね。

僕自身は沖縄でも、浮遊物が多い時には積極的にクローズアップレンズを使うようにしているのですが、それだけじゃないんだという事を学びました。
そして、こういう環境では60㎜マクロという選択肢もありかも…と、そんなことを思いながら1本目を終えたのでした。

 

■2本目:ミジンベニハゼ幼魚


(D850 + 105mm micro + UCL-90 + Z-330   f18 1/250秒 ISO64)

1本目、僕が牡蠣殻ミジンと悪戦苦闘している間に、日高の現地ガイドさんがチビミジンを発見してくれていました。
サイズは5㎜くらい。幼魚の中の幼魚です。
僕は2本目にじっくり撮らせていただきました。

この個体は、比較的綺麗な貝に住んでいました。
なので、貝の全体を入れて被写体の小ささを強調しよう!と最初は思ったのですが…
どうしても貝の中に溜まった泥の茶色が気になってしまったので、結局クローズアップレンズを装着して綺麗な部分だけを切り取ることにしました。

貝の全体像は、先ほどリンクを貼ったブログで見ることができます。
上から5番目の、エミナマリンのナナちゃんが撮影してくれた写真です。

 

1本目に撮った牡蠣殻ミジンのあたりは透視度2~3mくらいでしたが、チビミジンのあたりは5m前後見えていたように記憶しています。
それでもやはり浮遊物は多かったので、どうやって写り込みを回避するかというのが課題でした。

沖縄でもどこでも同じですが、浮遊物の写り込みをできるだけ減らすためには、背景の選び方も重要です。
「減らす」と言うよりは「目立たなくする」という方が正確かもしれませんね。

結論から言えば、浮遊物の写り込みが最も目立つのは「海」を背景にしたときです。
青抜きでも黒抜きでも同じですが、背景の色が暗いと白い浮遊物は目立ちます。
しかも、海ははるか向こうまで続いているので、写り込む浮遊物の量も相対的に多いです。
なので、僕も背景を海で抜くときには最新の注意を払いますし、濁った海では避ける傾向にあります。

では、どのような背景を選ぶと映り込みが目立ちにくいかというと、「白」に近い色を探すのがお勧めです。
先日沖縄の比較的濁ったポイントでスズメダイを撮影しましたが、できるだけ浮遊物の写り込みが目立たないように、ちょっと上から構えて岩の窪みに溜まった砂を背景にしました。


(D850 + 105mm micro + Z-330   f6.3 1/250秒 ISO64)

本州の砂は黒っぽいので、同じようにはいかないかもしれませんが、考え方としては応用できるはずです。

話を戻しますが、チビミジンが住んでいた貝には白くて綺麗な部分が残っていたので、そこに被写体がひょっこり現れるのをただひたすら待ちました。
現像時にゴミ取りはしましたが、1本目の牡蠣殻ミジンに比べると、だいぶ楽な作業で済みましたね。

ただ、被写体から5㎝の所でずっと待っていたので、中々出てきてくれず、枚数としてはほんのちょこっとしか撮れませんでした。


(D850 + 105mm micro + UCL-90 + Z-330   f18 1/250秒 ISO64)

 

今日はここまで、
透視度が悪く浮遊物の多い海で、どうやってクリアな写真を撮るか
という話をしてきました。

僕自身まだまだ力不足で、学ばせていただく事も多かったのですが、

・できるだけ被写体に寄ってレンズと被写体の間の浮遊物やモヤモヤを減らす
・ストロボをできるだけレンズから離し角度をつけてライティングする(正面から光を当てない)
・浮遊物の写り込みが目立ちにくい「白」っぽい背景を探す

というのがポイントになりそうです。

次回は、
②和歌山水中撮影レポート(みなべ編)~本州の海で綺麗な背景を探す~【仮】
というテーマで、背景の作り方について解説する予定ですので、お楽しみに!

それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました。
少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです!

 

p.s.

先日、今年の9/2-10/31で開催させていただく写真展のご案内をさせていただきました。
9/7(土)のオープニングパーティーは、お陰様で満席となりました。とっても嬉しいです。ありがとうございます。

10/31(木)のクロージングパーティーはまだ空きがありますので、ぜひ遊びにいらしてください。
当日はスライドトークショーなんかもやりますが、できるだけ皆さんとゆっくり飲みながらお話したいと思っています。

ご参加をご希望の方は、以下のページの下にある申し込みフォームからご連絡ください!

水中写真展&パーティーのお知らせ @菜酒家FU-KU

 

 

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