昨年、日本最大級のフォトコンテストとして「日本水中フォトコンテスト」が立ち上がりました。
第1回にもかかわらず2500点以上の応募があり、業界内だけでなく、各方面からの注目度も高かったように感じています。
2023年4月に開かれた授賞式には僕も参加しましたが、集まった応募者や関係者たちの熱気が凄くて、新たな夜明けの気配を感じました。
これまではダイビング専門誌主催のフォトコンが、国内水中写真コンテストの登竜門となっていました。
しかしながら、コロナ禍で雑誌自体が廃刊となってしまい、長きにわたって続いてきた全国規模の水中フォトコンテストもなくなってしまいました。
そんな状況の中、「もっと水中写真に夢中になって欲しい」という思いで発足されたのが日本水中フォトコンテスト(JUPC)です。
この度、めでたく第2回JUPCの開催が決まりました。
作品の応募は2023年11月1日スタートですが、是非今のうちに第1回の受賞作なんかもチェックしつつ、第2回の応募に向けて作品を撮っていってほしいなと思います。
応募要項などの詳細はJUPCのHPをご覧ください↓
そしてなんとなんと、私、第2回日本水中フォトコンテストの審査員を務めさせていただくこととなりました。
元々JUPCが立ち上げられた経緯や趣旨に共感していましたので、お話をいただいた際には、二つ返事で「是非やらせてください」とお伝えしました。
写真家としての活動が10年にも満たない僕が審査員を務めるなんて恐縮極まりないのですが、自分を育ててくれた水中写真という文化の発展に寄与できるよう、全力で頑張ります。
審査員は、全部で6名です。
名誉顧問は、第1回から引き続き中村征夫さん。
審査委員長も前回から続投で、高砂淳二さん。
審査員4名は第1回とは入れ替わり、阿部秀樹さん、中村卓哉さん、むらいさちさん、僕です。
どなたも、僕が水中写真を始めた時には、すでに写真家として活躍されていました。
錚々たるメンバーすぎて、正直に言って、こんな方々の中に入れてもらっていいんだろうかとも思います。
それと同時に、水中写真家としてやってきたことが少なからず認められたことを嬉しく思いますし、ここまで応援してきてくれた方に心から感謝しています。
最近水中写真を始められた方は、たまたま僕のSNSやblogには辿り着いたけれど、もしかすると、審査員の方々を知らないかもしれません。
なので、僕が勝手に、審査員の皆さんを紹介するというほどではありませんが、僕なりの思い出を書いてみようと思います。
特に役には立ちませんが、もし興味があれば。
■名誉顧問 中村征夫さん
初めて訪れた水中写真展は、中村征夫さんの個展だったように記憶しています。
大学を出て製薬会社に入社し、日本橋で新入社員研修を受けている頃だったような。
ちょうどダイビングを始めたてで、近くで水中写真展が開催されていることを知り、これは行ってみよう!と思って行ってみたんだっけな。
10年以上前なので詳細は思い出せないのですが、魚の顔が大きなプリント作品になっていて、なんか凄いと思いました。
当時好きだった同期の子と一緒に行って、話が盛り上がった記憶ははっきりとあります。
僕が紹介するまでもありませんが、中村征夫さんは、日本の水中写真の歴史を作ってこられた方です。
写真界の直木賞と言われている、木村伊兵衛写真賞を水中写真で受賞されたのは、中村征夫さんだけです。
生ける伝説と言ってもいいかもしれません。背筋が伸びます。
■審査委員長 高砂淳二さん
もはやいつからだったかも思い出せませんが、ダイビングを始める前から高砂さんの写真が好きで、写真集も持っていました。
どうやら周りにも高砂さんの話をしていたようで、僕の誕生日に高砂さんの写真集をプレゼントしてくれた友人もいました。
高砂さんの写真だけでなく文章も好きで、エッセイも読みました。
エッセイの中に出てくる言葉で、ずっと心に残っている言葉があります。
「人間には自然が必要だけど、自然にも人間が必要。」
正確ではないかもしれませんが、オーストラリア原住民の言葉として紹介されていたように記憶しています。
先日高砂さんとお会いした際に、「あの言葉が胸に残っていて、僕にとって一つの希望になっています」ということを伝えました。
日本酒を飲みすぎていて細かいことは覚えていないのですが、温かい笑顔で包み込んでくれました。
自然写真家として世界で活躍する、憧れの大先輩です。
■審査員 阿部秀樹さん
生態写真というジャンルを知ったのも、阿部さんの写真や文章からだったように記憶しています。
雑誌に連載されていた「愛の流儀」を読んで、ダイビングって、水中写真ってこんな楽しみ方もあるのか!と衝撃を受けました。
今年上梓された「食いねぇ! お寿司まるごと図鑑」では、その熱量に圧倒されました。
本を作るってこういうことなのか…と、被写体や目の前の仕事に向き合う姿勢に、身の引き締まる思いでした。
水中写真から始まり、出汁や寿司の本まで出せるというのが、シンプルに凄いです。
■審査員 中村卓哉さん
うまく言葉にはできませんが、卓哉さんの写真を見るとドキッとします。
もちろん被写体が主役なんですが、卓哉さんの一瞬にかける思いのようなものを感じます。
僕にとって卓哉さんの作品と言えば、2018年に上梓された写真集「辺野古 海と森がつなぐ命」です。
写真家というのが単なる職業ではなく、生き方であるということを、この写真集を通して学んだように感じています。
自分は人生をかけてどんな仕事を成し遂げるべきなのか、今も考えています。
■審査員 むらいさちさん
何を撮っても「むらいさち」になるって、写真家としての一つのゴールのように感じます。
僕が水中写真を始めた頃には、すでに「さち風」という言葉もありました。
これまでの水中写真とは一線を画したファンタジックな世界を作ったという意味で、時代を切り開いたパイオニアです。
僕にとってむらいさちさんと言えば、たまに飲みにつれて行ってくれて相談に乗ってくれる、優しいお兄さんです。
この前も、那覇の美味しい羊専門店に連れて行ってくれて、羊の角煮に羊のユッケ、羊のカレーまで、3軒目にも関わらずお腹いっぱい羊を食べさせてくれました。
いつか僕が美味しい山羊専門店を案内して、恩返ししたいです。
以上、審査員の皆さんに対して色んな思いがあったので、書いてみました。
とにかく凄い方たちの中に入れてもらった、という感動が伝われば幸いです。
20年後に、僕も誰かに紹介してもらえるように頑張ります。
では、皆さんの心のこもった作品と出会えることを楽しみにしています!