写真展を終えて。写真家という仕事について考える。

 

こんにちは、上出です。

6/3から6/23まで、六本木の富士フイルムフォトサロンにて写真展「陽だまり レンズ越しに見つめた10㎜の海」を開催させていただきました。

 

会場にお越しいただいた皆さん、写真展の開催にあたり力を貸してくださった皆さん、どうもありがとうございました。

こうして名護の自宅で東京で過ごした日々を思い返してみると、なんだか夢だったような気がしてきます。

終わってから少し時間が経ってしまいましたが、少し振り返らせてください。

振り返りながら、今後の活動の方向性についても書こうと思います。

 

まず、写真展を開催して、本当に良かったです。

開催までの過程で学ぶことも多かったし、会期中に色んな出会いもあったし、写真展前と後でははっきり言って見えている景色が全然違います。

 

もちろん、「ここはもっとこうすればよかった」という部分はあります。

ただ、どちらかというと実務的なことですし、そういうことは枝葉にすぎないので、今日は割愛します。

もう少し写真の本質的な話(だと僕は感じている)をさせてください。

 

写真家の仕事ってなんだろう?

写真を撮るってどういうことなんだろう?

ということについて、考えていければと。

 

富士フイルムフォトサロン東京では、入館者数をカウントしています。

会期中(3週間)の来館者数は、18,852名でした。

 

こんなにたくさんの方が来てくださったんですね。素晴らしい!

のですが、これは僕の個展に来てくれた数ではなく、施設全体の入館者数なので、僕の作品を見てくれた方はもっと少ないはずです。

他の展示だけ見て帰った方もたくさんいるはずなので。

 

とまあそれは大した問題ではないのですが、何が言いたいのかというと…

「初めての東京での写真展が大成功で終われたっぽい」ということです。

 

数だけではなく、会場に来てくれた皆さんの反応や、ダイビングメディアの方々があげてくれた記事を見ていると、そう言っていいのかなと思っています。

富士フイルムの社員さんからも、すこぶる評判がいいというお話をいただきました(みんなに言ってるのかもしれないけど、僕は基本的になんでもすぐ信じるタイプ)。

他にも「成功だった」と思う理由はいくつかあるのですが、なんだか自慢?自画自賛?みたいなので、もういいでしょう。

ひとまず自分では成功だったと思っているということです。

 

では、なぜ写真展を成功裏に終えられたのでしょうか?

今日はそこを掘り下げてみます。

 

「テーマが良かった」

 

成功の理由は、ここに尽きると思っています。

写真展のステートメントから一部抜粋します。

 

海の中には様々な生き物が暮らしていますが、今回登場するのは、大きさが1㎝にも満たないようなとっても小さな生き物たちです。

北海道から沖縄まで、日本の海で暮らす彼らの日常を、できるだけ丁寧に切り取りました。

多くの方がイメージする「青い海」ではない、数えきれないほどの色彩で溢れた水中のもう一つの世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

第一テーマが「青くない海」で、第二テーマが「極小の生き物たち」という感じでしょうか。

 

実際に会場では、

「え⁉これ海の中なんですか?こんなにカラフルなんです?」

「え⁉そんなに小さいんですか⁉」

というコメントを毎日いただきました。

 

テーマというのは、言い換えれば「視点」なのだと思います。

「私は世界をこう見ています」というのが視点です。

今回の展示に関しては、この「視点」が明確で、かつ新鮮に感じてもらえたことが、とても大きかったように感じています。

 

では、このテーマはどうやって決めたのでしょうか?

「青くない海(マクロ)」の方は、ダイブジャーニーの洸也くんの家で酒を飲みながら考えました。

 

いや、嘘です。考えていません。

「それが一番俊作らしいと思うんやけどなあ」と言われて、なるほどそうかと思い、そのまま決めました。

僕が元々考えていたのはもっと漠然としたテーマで(「沖縄」とか)、それだと写真をセレクトしてもお気に入り作品集の域から出なかったんですよね。

 

結果的に、青のない水中マクロ写真だけの写真展にしたことで、自分らしさのようなものが溢れ出たっぽいです。

そして、とってもあたたかい空間になりました。

 

では、「1㎝に満たない小さな生き物」というのはどうやって考えたのでしょうか?

「青のない海」だけでは弱いから、もう一つフックとして何かサブテーマを入れよう。

なんて考えたわけではありません。

富士フイルムの本社で初めて打ち合わせをした時に、デザイナーさんから「え⁉これそんなに小さいんですかえ⁉それはちゃんと打ち出した方が面白いですよ!」と言われて、「あ、そうなんですね」という感じで、テーマに入りました。

 

正直僕は、自分が撮影している対象が特別小さいと思ってなかったんですよね。

でも、一般の方からしてみると、それは驚きのサイズだったようです。

 

というわけで、第一テーマも第二テーマも、人から言われて決まりました。

と言うとなんだか主体性に欠ける人間のようですが、別に悪いことだとは思っていません。

 

僕は写真は撮れるけど(文章書くのも好きだけど)、ゼロから何かをクリエイトしたり、自分を売り出したり?するのは得意ではないので、そういうことは人に任せた方がいいと思っています。

なので、会場のレイアウトもデザイナーさんに一任しました。

 

ここまでの話をまとめると、

①写真展は成功だった(と自分では思っている)

②理由はテーマが良かったから

③テーマは人からいただいた

という感じですかね。

 

写真展のテーマは自分で決めていませんが、自分では特にテーマとして認識していなかったというだけで、僕には水中世界がそう見えていたということです。

 

自分の視点を写真に落とし込めて、それを公の場で発表したことにより、色々な反応が生まれました。

もちろん「癒された」とか「綺麗」とか「可愛い」とか、そういう感想もいただきましたし、それはそれで心から嬉しいです。

そもそも、自分の写真が人に何か影響を与えられているということ自体が、夢のようなことですからね。

 

でも、それだけでは写真家として弱いというかなんというか。

僕もまだまだ勉強中だしいつか考え方も変わるかもしれませんが、「視点を提供する」ということが写真家の一つの仕事なのではないかと、今回感じました。

 

言い換えれば、自分なりの視点を持っていなければ、写真家としては生きていけないのではないかとも思いました。

 

一昔前までは、「まだ誰も行ったことがない場所」とか「写真家じゃないと撮れない被写体」がありました。

でも今の時代、絶景は一瞬で世界中にシェアされますし、撮影機材の進歩と共に誰でも何でも撮ることができます。

 

そんな時代に生きる写真家の一人として、「自分は世界をどう見るのか」ということは、深く意識していかなければいけないのかなと。

「こんな世界もあるんだよ」と。

 

そんなわけで、今回の写真展を通して「テーマ」とか「視点」というものを強く意識するようになりました。

じゃあこれから何をどう撮っていきましょうか。

 

おそらく、今回発表した「青のないマクロ」以上に自分らしさのようなものが出るテーマは、他にはありません。

少なくとも、今はそう思っています。

 

元々ただ水中の生き物が好きで、どうやったらこの子が可愛く魅力的に写るだろうかと思いながら撮っていたら、今の形になりました。

当然今も同じ気持ちですし、これからもこの撮影は続けます。

「陽だまり」という一つのシリーズにして、僕が写真家であり続ける限り、発表し続けていきたいですね。

5年に1回くらい、陽だまり写真展ができたらいいな(写真集もね)。

 

では、他のテーマはどうでしょう?何か自分なりの視点があるでしょうか?

ないと困りますよね。俺がずっと撮っているワイドはなんなんだ、と。

でも、まだはっきりとはわかりません。

 

細かいことはこれからじっくり考えますが、自分の中でいくつかテーマを決めて、写真展で発表することを前提に作品づくりをしていくことは決めました。

逆に、これまでなんとなく撮っていて自分なりの視点がなかったものに関しては、今後は撮るのをやめるかもしれません。

撮りたくないわけではないのですが、自分の体力や使える時間を考えると、思い切ってやめる勇気も必要なのかなと。

 

現時点で、いくつか発表したいテーマはあります。

作品もすでにけっこう溜まってきてはいます。

 

でも、例えばそれが奄美・沖縄のザトウクジラだとして、それだけで「テーマ」とは言えるかもしれませんが、自分がそれをどうとらえているのか、どう見て切り取っているのか、という「視点」は、自分でもまだわかっていません。

 

そこに対して熱い思いがあることは確かなのですが、それがどんな思いなのか明確にならないと作品はまとめられないでしょう。

あるいは、今回のように写真展を開催すると決めてから、振り返りながら考えてもいいのかもしれません。その方が現実的なのかしら…?

 

なんだか書きながら混乱してきました。

「テーマとは視点だ」と言っておきながら、テーマと視点は少しニュアンスが違うような気もしてきました。

まあいいか。思考すること自体に意味がありますしね。

 

写真を撮る目的なんて、十人十色でいいと思います。

別に撮る理由とか目的とか、そんなものはなくてもいいでしょう。

僕もそんなことを考えて写真を撮り始めたわけじゃないですし。

 

でも、誰でも写真を撮って発表できる時代だからこそ、「自分はなぜそれを撮るのか」という問いと、「自分はそれをどう見ているのか」という視点は、常に自分の中に持っていなければと思いました。

 

ひとまずこれまで通り、目の前の被写体の魅力を100%写真に乗せられるように、丁寧に撮影していこうと思います。

細かいことはまた考えましょう。

 

そんなわけで、写真展を開催してよかったです。

色んな事を考えるきっかけになりましたし、ようやくちゃんと写真家になれたような気がしました。

 

またやりたいです。やります。

2年に1回くらいやれたらいいな。

 

なんだか「写真展完結、次に向かって進みます!」的な記事になってしまいましたが、10月には大阪巡回展もありますので。

関西圏にお住まいの方、関西に行かれる用事のある方、是非遊びにいらしてください。

また近くなったらお知らせしますが、以下の通り在廊日もほぼ決まりました。

 

陽だまり レンズ越しに見つめた10mmの海 大阪巡回展

会場:富士フイルムフォトサロン 大阪 ホワイエ

会期:2022年10月7日(金)~10月20日(木)

時間:10:00-19:00(10/13,20は14:00まで、入館は終了10分前まで)

在廊予定日:10/7~11、10/15~20

写真展詳細:富士フイルムスクエアHP

 

写真集も引き続き販売中です。

大阪展の会場かオンラインストアでお買い求めいただけます↓

まずはこの写真集がしっかり売れないと次がありません。お願いします。買ってください。

 

●写真集「陽だまり」(2022年6月1日発売)

判型:A4変形 ハードカバー

頁数:112P

収録作品:94点

印刷・製本:八紘美術

陽だまりスタジオOnline Store

 

それでは、今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。

抽象的な話が多くなってしまいましたが、たまには?こんなのもいいですよね。

少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです!