こんにちは、上出です。
台風が来るとブログをアップするというのが、ここ数年のルーティンになってきました。
まあでも今年は、台風が来なくても、それなりに記事を書いてこれたと思っています。
誰も褒めてくれないので、自分で褒めましょうかね。俊作、よく頑張ったよ。
さて、先月和歌山はみなべでフォトセミナーを開催しました。
事前にいただいていたリクエストは、こんな感じです↓
「水中マクロ撮影において、最短撮影距離まで寄る意味、そしてその時のf値についてどう考えるべきか解説して欲しい」
なんだか、このリクエスト自体がレベルが高いですよね。
ズバッとそこに答えにいっても良かったのですが、その時のセミナー参加者は、ガッツリ一眼メンバーからコンデジで水中写真を始めたばかりの初心者まで、ステージはバラバラ。
せめて、水中写真を始めたばかりの方にとって、今はよくわからなくても、今後生かせるような話にしたいなと思いました。
このリクエストに、初心者の方でもついてこられるように丁寧に答えようとすると、結果的に「ボケ」について解説することになります。
ボケを決めるのは、以下の4つの要素です。
1.レンズの焦点距離
2.絞り(F値)
3.被写体と背景の距離
4.被写体とカメラの距離
フォトセミナーでは全て解説しましたが、さすがにここで全部は書ききれないので、今日は「1.レンズの焦点距離」について解説します。
「レンズの焦点距離とボケはどのような関係にあり、何に注意すべきなのか」という話です。
(最後にちらっと「4.被写体とカメラの距離」についても触れます。)
今コンデジを使っていて、これからミラーレス一眼や一眼レフにステップアップしようとしている方、今日の記事は是非読んでください。
レンズ選びで失敗しなくなりますよ。
すでに一眼を使っている方も、焦点距離とボケについて正確に理解する、いい機会になると思います。
一眼で水中写真を撮っていると、いつか必ず、「これから水中写真を本格的に始めよう!」という方からカメラについての相談を受けることになりますからね。
さりげなくいい方向に導いてあげてください。
D850 105mm Z-330 f5.6 1/250秒 ISO64
レンズの焦点距離
「焦点距離」って言葉が、カメラの専門用語っぽくて嫌な感じですよね。
「○○㎜」といった数値で表記されている、あれです。
「mm」なので、長いとか短いとか言います。
光学的な話などなどは一旦置いておいて、焦点距離が何を表しているかというと、「画角」です。
数字が小さくなればなるほど、画角は広くなります。
逆に、数字が大きくなればなるほど、画角は狭くなります。
陸上では、状況や被写体によって色々なレンズを使い分けますが、水中で使うレンズは、現実的にはかなーり限られています。
参考までに、以下が、僕が水中撮影でよく使うレンズです。
【水中ワイド】
AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
【水中マクロ】
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
太字にした部分が焦点距離ですね。
今日はマクロの話がしたいので、ワイドはまあいいでしょう。
一般的に、水中マクロ撮影で使われるレンズの焦点距離には、以下のような選択肢があります。
Nikon:105mm,60mm
Canon:100mm,(60mm)
SONY:90mm
Olympus:60mm
まあ、他にもありますが、ややこしいのでこれくらいで。
105㎜の画角は90㎜よりも狭いし、90㎜の画角は60㎜よりも狭い。
画角が狭いということは、被写体が大きく写る(同じ距離から撮影した場合)。
ただそれだけの話です。ここまでは。
D850 105mm Z-330 f6.3 1/250秒 ISO100
焦点距離と35㎜換算
焦点距離が長い(数字が大きい)=画角が狭い=被写体が大きく写る
ということはわかりました。
しかし、ここでもう一つ考えなければならないことがあります。
それは、「同じ焦点距離のレンズでも、装着する一眼カメラのセンサーのサイズによって画角が変わる」ということです。
もうやめてくれよー、という感じですね。
でも大丈夫。知ってるか知らないかだけの話なので。
※今日の話は、「ミラーレス一眼」か「一眼レフ」かは、関係ありません。
関係するのは、ミラーがあるかないかではなく、センサーのサイズです。
なので、どちらもまとめて「一眼カメラ」と呼ぶことにします。
ざっくり言うと、一眼カメラには3つの規格(センサーサイズ)があります。
①フルサイズ
②APS-C(フルサイズより小さい)
③マイクロフォーサーズ(APS-Cよりも小さい)
どれくらいサイズが違うかなどなどは、興味があれば調べてみてください。
一例として、焦点距離60㎜のレンズで考えてみましょうか。
これは、フルサイズに装着すると、そのまま60㎜の画角で撮れます。
NikonのAPS-Cにつけると、1.5倍の、90㎜相当の画角になります(CanonのAPS-Cだと1.6倍)。
Olympusのマイクロフォーサーズにつけると、なんと2倍。120㎜相当の画角です。
つまり、同じ焦点距離のレンズでも、センサーのサイズが小さくなると、画角が狭くなる、つまり被写体が大きく写るようになるんですね。
この「○○㎜相当の画角」というのが、よく聞く35㎜換算です。
細かいことは省きますが、ここでは「35㎜換算=フルサイズ換算」という理解でOKです。
「フルサイズが基準になっている」くらいのイメージを持っておきましょう。
「焦点距離は60㎜だけど、マイクロフォーサーズでそのレンズを使う場合、フルサイズ換算で120㎜相当の画角になりますよ。」という話です。
D850 105mm SMC-1 Z-330 f8 1/250秒 ISO64
焦点距離とボケ
はっきり言って、ここまでの話は調べればすぐに出てきますし、知っている方も多いでしょう。
大事なのはここからです。
焦点距離が表しているのは、画角だけではありません。
「どれだけボケるか」も表しています。
焦点距離が長い方が、つまり○○㎜の数字が大きい方が、ボケます。
60㎜より90㎜の方がボケるし、90㎜より105㎜の方がボケます。
これは、フルサイズ換算の話ではないですからね。
レンズに書いてる○○㎜という数字。つまりレンズの焦点距離そのものの話です。
D850 105mm Z-330 SMC-1 f9 1/250秒 ISO64
例を出してみましょう。
実際によくあるケースです。
ナカモト君は、これまで使っていたTG-6を卒業し、一眼にステップアップしようとしています。
色々調べた結果、以下のような選択肢が出てきました。
①Nikon D850(フルサイズ)+ 105㎜
②Nikon D7500(APS-C)+ 60mm
③SONY α1(フルサイズ)+ 90mm
① この選択肢が出てくるのは、陽だまりかくれんぼの読者なら当然です。上出と同じ機材ですから。むしろ、これ一択でもいいくらいです。
② これもまあ、わかりますよ。上出も最初は、D7000というAPS-C機を使っていました。歴史を踏襲しようという真面目さに好感が持てます。値段も安いですしね。
ちなみに、僕は最初から105㎜でしたが、ナカモト君は60㎜を選ぼうとしています。
この場合の画角は、フルサイズ換算で90㎜相当です。
③ 時代はミラーレス一眼、ミラーレスの先駆者と言えばSONYですよね。
しかも、α1と言えば、5010万画素、秒間30コマ連写の化け物機じゃないですか。
SONYのオンラインストアで、カメラだけで88万円でした。
この選択肢が出てくるのは、上出ファンっぽくないとはいえ、まあ時代の流れなので仕方ないでしょう。
ちなみに、α9でもα7シリーズでも、考え方は一緒です。
ここからが、今日の記事のキモの部分です。
②と③、フルサイズ換算で比べると、どちらも90㎜相当の画角になります。
③の90㎜は、そもそも焦点距離が90㎜ですし、フルサイズで使うのでまあ当たり前です。
②の場合は、焦点距離60㎜のレンズを、NikonのAPS-Cで使うため、画角が90㎜相当になります。
ではこの場合、②と③のボケ方は同じくらいになるのでしょうか?
答えはNOです。
ボケ方は、そもそものレンズの焦点距離によって決まります。
例えフルサイズ換算で同じ画角になっても、それは画角が同じになっただけ、つまり被写体をどれくらいの大きさで写せるかが同じになっただけです。
60㎜のレンズは、フルサイズ換算で何ミリ相当になろうが、焦点距離自体が変わるわけではないので、60㎜のボケ方しかしません。
ここがめちゃくちゃ大事なんです。
D850 105mm Z-330 f5 1/250秒 ISO64
②の組み合わせのように、APS-Cに60㎜のレンズをつけて水中一眼撮影を始める方は、けっこういます。
「フルサイズ換算で90㎜相当の画角はちょうどいいから」という理由が多いでしょうかね。
もちろん、これが悪いわけではありません。
確かに、画角としては使いやすいと思います。
でも、「思ったほどボケない」ということは理解しておくべきです。
それこそ、オリンパスのマイクロフォーサーズ(OM-Dとか)に60㎜マクロをつけていた方が、APS-C+60㎜に変えても、ボケ方は変わりません。
画角が広くなるだけです。
そもそも、水中マクロ撮影というのは、陸も含めた一般的な撮影から見れば、かなり特殊な撮影になります。
ネットで調べると出てくる「焦点距離と35㎜換算(フルサイズ換算)」の記事は、ほとんどが陸前提で書かれているので、ちょっと視点が違うなと感じました。
フルサイズ換算というのは、基本的には「画角」の話です。
たしかにそれはめちゃくちゃ大事だし、水中写真においても無視はできません。
でも、水中マクロ写真にはまっていって、一眼カメラにステップアップしようとしている人の多くが、「もっとぼかしたい」と思っているはずです。
(もちろん違う方向性の方もいますよ。)
そんな人が優先すべきなのは、フルサイズ換算(35㎜換算)ではありません。
レンズそのものの焦点距離の方が、ずっと大事です。
だから、まず何mmの焦点距離のレンズを使うのかを決めて、それからカメラを決めるという順番も、現実的だと思います。
具体的に見ていきましょう。
マクロレンズの選択肢として、
①105㎜(Nikon)
②60㎜(Nikon)
③90㎜(SONY)
の3つが出てきました。
Canonの場合は105㎜ではなく100㎜ですが、Nikonの105㎜とほぼ同じものとしてとらえておいてください。
まず、水中マクロで、ボケを生かした画作りをしたいなら、②60㎜は選択肢に入りません。
逆に、ぼかしたくないような(被写界深度を深く取りたい)シチュエーションや作風の場合は、60㎜は積極的に使うべきレンズです。
(あくまで、105㎜や90㎜との比較の中での話です。)
③90㎜はどうでしょうか。
これくらいの焦点距離になってくれば、ボケという意味でも必要十分だと思います。
ただ、①の105㎜と比べた場合、やはり若干はボケにくくなります。
正直、この差を感じる方は少ないと思うので、これから始める方は90㎜でもいいのかなと。
僕のように105㎜を10年近く使っている人にとっては、90㎜だとそれなりに違いを感じます。
実際には、SONYを使っている人は、別に90㎜が使いたかったわけじゃなくて、SONYが使いたいんだと思います。
それはそれで、全然ありです。
というわけで、現状ボケだけを考えてレンズを選ぶなら、
1位:105㎜(Nikon)
2位:100㎜(Canon)
3位:90㎜(SONY)
となるわけですが、まあこの3つは「100㎜クラスのマクロレンズ」とまとめてしまっていい範囲だと思います。
ぼかしたいなら、この3つのうちのどれかを選びましょう。
(TAMRONの90㎜とかでもいいですよ。特別好きなら。)
D850 105mm Z-330 f13 1/250秒 ISO64
ナカモト君の話に戻しましょうか。
①Nikon D850(フルサイズ)+ 105㎜
②Nikon D7500(APS-C)+ 60mm
③SONY α1(フルサイズ)+ 90mm
やっぱり俺はSONYってキャラじゃないよな、ということで、③は選択肢から外しました。
(別にSONYがダメってわけじゃないですよ。話の進行上。)
②も外れますよね。
上出さんみたいにぼかしたいのに、60㎜じゃぼかせません。
というわけで、
①Nikon D850(フルサイズ)+ 105㎜
に決定してくれれば話も早いのですが、思慮深いナカモト君は、ここでさらに考えます。
上出さんは「最初に何mmの焦点距離を使うのかを決めて、それからカメラを決めるという順番も現実的」って言っていたなあ。
Nikonがなんとなく好きだし、レンズは105㎜に決めたけど、カメラはAPS-Cじゃだめなんだろうか?
D7500+105㎜って組み合わせはダメなの?
この考え、的を射ています。
結論から言えば、それも全然ダメではありません。
ここで詳しく解説しようと思っていましたが、その点については以前記事を書いたことを思い出しました。
というわけで、「APS-Cじゃダメなの?」という点については、以下の記事をご覧ください。
結論だけ書いておくと、APS-Cでもダメではありませんが、個人的には最初からフルサイズを買うのがオススメです。
■水中マクロ撮影に適した一眼はどっち? ~「フルサイズ」vs「APS-C」~
「フルサイズの方がボケる」の意味は?
最後に、ちょっとオマケ的な話を。
巷ではよく「APS-Cよりフルサイズの方がボケる」という話が飛び交っています。
でも、これまで解説してきたように、同じ焦点距離のレンズを使えば、APS-Cでもフルサイズでもボケ方(被写界深度)は一緒です。
105㎜マクロレンズを買えば、それをD7500につけようが、D850につけようが、同じようにボケます。
じゃあなんでそういうことが言われているかというと…
先ほどもちらっと書いたように、陸上撮影では一般的に、画角が優先されるからだと思います。
ナカモト君の例で言うと、以下の2つのパターンは画角が同じになります。
②Nikon D7500(APS-C)+ 60mm
③SONY α1(フルサイズ)+ 90mm
画角を合わせた時に、結果的にフルサイズの方が長い焦点距離のレンズを使うことになります。
つまり「フルサイズの方がボケる」というのは、「画角を合わせた時にフルサイズの方がボケるレンズを使うことになる」ということなんですね。
D850 105mm Z-330 SMC-1 f7.1 1/250秒 ISO64
ここからは、オマケのオマケです。
あまり自信がない話なので、間違っていたらどなたか教えて下さい。
D850(フルサイズ)に105㎜をつけた場合と、D7500(APS-C)に105㎜をつけた場合を比べてみます。
この場合は、画角は揃っていないですが、使っているレンズは一緒なので、ボケ方も一緒になるはずです。
しかし実際には、この状態でもボケ方、というかボケの感じ方に差が出る可能性があります。
理由は2つです(どちらも仮説です)。
1つ目は、APS-Cだと、ボケている部分が画面の中で相対的に少なくなるから。
どういうことかと言うと、105㎜をD7500につけて撮影した写真は、105㎜をD850につけて撮影した写真をトリミングしているのと、ほぼ同じことになります。
実際にD850で撮影した写真で見てみましょうか。
上がトリミングなしの写真、下がトリミングありの写真です。
正確ではありませんが、下の写真は、ほぼAPS-Cの画角と言っていいと思います。
D850 105mm Z-330 f6.3 1/250秒 ISO64
一般的に、ピントというのは、毎回画面の中心付近に合わせるわけではないですが、かと言って、画面の端っこに合わせるということはあまりありません。
なので、画面の外側近くは、ボケていることが多いはずです。
APS-Cだと、ボケている部分が入りづらい(切られてしまう)、つまり画面を占める割合としてボケている部分が少なくなるので、「フルサイズの方がボケる」と言われているのではないか。
これが1つ目の理由(仮説)ですが、正直上の2枚を見て、どう感じるかは人それぞれだと思います。
2つ目は、APS-Cだと、カメラと被写体の距離が遠くなりがちだから。
細かい説明は省きますが、カメラと被写体の距離が近くなればなるほど、被写界深度は浅くなり、ボケは大きくなります。
例えば、D7500に105㎜をつけると、画角はフルサイズ換算で157.5㎜相当です。
つまり、被写体がかなり大きく写ります。
そのため、「寄りが甘くなる」ことがあると思うんです。
寄らなくても、被写体をある程度大きく写せてしまうから。
カメラと被写体との距離が遠くなってしまうことで、ボケにくくなる。
これが、2つ目の理由(仮説)です。
どっちも合っているのかはわかりませんが、同じレンズを使ってもフルサイズとAPS-Cでボケ方の差を感じるとしたら、そんな要因が考えられるのかもしれないという話でした。
D850 105mm Z-330 f6.3 1/250秒 ISO100
今日はここまで、「レンズの焦点距離と35㎜換算(フルサイズ換算)」について解説してきました。
ボケを生かした画作りをするためにはどんなレンズを選ぶべきか、よくわかったと思います。
35㎜換算(フルサイズ換算)はあくまで画角を把握するための指標だということを頭に入れた上で、自分の撮りたい写真に合った焦点距離のレンズを選んでみてください。
現在コンデジを使っている方は、今日の話は半分も理解できなかったかもしれません。それでOKです。
今わからなくても、一眼にステップアップする時に読み直してもらえれば、それで十分です。
深い意味はないですが、今日の記事では和歌山で撮影した写真のみを掲載してみました。
それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました。
少しでも参考になれば嬉しいです!
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