水中マクロ撮影に適した一眼はどっち? ~「フルサイズ」vs「APS-C」~

 

こんにちは、上出です。
2020年もそろそろ終わりですね。
全然ブログを更新できていなくてごめんなさい(毎年同じことを言ってる気が…)。
罪滅ぼしじゃないですが、年末年始で何本かアップしようと思っています…


D850 105mm SMC-1 Z-330  f8 1/250秒 ISO64

さて今日は、
「フルサイズとAPS-C、どっちを買えばいいですか?」
という、今も昔もよくいただく質問に答えていこうと思います。
水中写真に限らず、よく話題に出るテーマですよね。

これ、本気で比較してメリットデメリットを上げようと思ったら、けっこう大変です。
いろーんな要素がありますので。

でも、今は便利な世の中で、YouTubeで「フルサイズ APS-C」と検索すれば、いくらでも比較動画を見ることができます。
一般的な比較はそちらに譲ることにして、この記事では「水中写真」に特化して解説します。

水中写真は便宜上「水中マクロ」と「水中ワイド」に分けることが多いので、フルサイズかAPS-Cかを考えるうえでも、分けて考えた方が良さそうです。
個人的にはマクロの方が差を感じやすいと思っているので、今日は「水中マクロ」を撮るうえでどんな差が出るかについて考えていきましょう。

また、今日の記事では、水中マクロ撮影で僕が大事にしている考え方についても触れていきます。
ですので、すでに一眼で水中撮影に取り組んでいて、買い替えを検討しているわけではない方も是非最後まで読んでみてください。


D850 105mm SMC-1 Z-330  f7.1 1/250秒 ISO64

 

■ワイドついても一言だけ

一応最初に、水中ワイドについてもちょっとだけ触れておきます。
水中ワイドはフルサイズでもAPS-Cでも問題なく撮れますし、無理してAPS-Cからフルサイズに買い替えなくてもいいのかなと思います。

「このレンズを使いたい」
「高感度耐性を上げたい」
「もっと階調豊かに撮りたい」

とかがあれば、買い替えてもいいですが。

これから一眼を買う方で、予算的になんとかなるならフルサイズを勧めますけどね。
フルサイズのデメリットって、あまりないので。

ちなみにこの記事では、一眼レフとミラーレス一眼を合わせて「一眼」と呼ぶことにします。

 

■フルサイズとAPS-C、どちらを買えば良いのか

いきなり結論です。

①これから一眼で水中マクロ撮影を始める方:フルサイズがお勧め
「水中マクロ撮影」と書きましたが、先ほど「水中ワイド撮影」でもフルサイズがお勧めと書きました。
なので、マクロとかワイドとかに関係なく、これから一眼を買う方には、基本的にはフルサイズがお勧めです。
借金してでも…とまでは言いませんが、数年後のことまで考えると、背伸びする価値はあると思います。

②現在APS-Cで水中マクロ撮影に取り組んでいる方:撮りたい被写体による
4年間プライベートフォトセミナーを開催してきた中で、APS-Cユーザーの方がどんな悩みに直面するのかわかってきました。
これから深掘りしていきましょう。


D850 105mm SMC-1 Z-330  f9 1/250秒 ISO64

 

■APS-Cの特徴と位置づけ

まず、APS-C機がどんなカメラなのか考えてみます。

Nikon、Canon、SONYなど多くのカメラメーカーが「一眼入門機」として発売しているのはAPS-Cです。
なので、「これから一眼を始めよう」という人は「APS-Cから入った方がいいのかな?」と思うのが自然な流れでしょう。

実際僕も、初めて購入した一眼レフはNikonのD5100?か何かのAPS-C入門機でした。
その後D7000(APS-C)を買って、これを水中に持ち込んだのが確か2012年。
そこから3年か4年は、ずっとD7000+アンティスのハウジングで水中写真を撮っていましたね。
当時は不満もなかったですし、「良い買い物をしたなー」と心から思っています。
(不満がなかったのはフルサイズを使ったことがなかったからとも言えますが。)

なので、僕はAPS-Cを否定する気は全くありません。
APS-C機でも「作品」と呼べる水中写真は撮れます


D7000 105mm Z-330  f8 1/100秒 ISO160

 

では何故一眼の入門機がAPS-Cになっているかというと、
小型・軽量・安価
だからですね。

これは初心者とか入門とかに関わらず、全ての人にとってメリットと言えます。
しかし、水中写真を撮る人にとっては、このメリットを享受しづらいんです。

まず、小型・軽量という点について。

これには、
・カメラ本体がフルサイズに比べて小さくて軽い
・APS-C専用のレンズはフルサイズ対応のレンズに比べて小さくて軽い
という2つの意味があります。

水中撮影で使うレンズは、陸撮に比べるとだいぶ限られます。
特に、水中マクロ撮影で多くの人が使っている100㎜クラスのマクロレンズには、APS-C専用というものがありません。
つまり、せっかくカメラが小型軽量でも、レンズが大きくて重くてカメラの小ささ軽さを感じづらいんですよね。

しかも、防水ハウジングに入れて水中にカメラを持ち込むことになります。
ごっついハウジングにカメラを入れたら、カメラが多少軽かったり小さかったりしてもあまりメリットには感じられません。
正直、全体の重さや大きさを気にするなら、カメラの種類よりもハウジングメーカー選びの方が重要です。

もっと言うなら、今はミラーレス一眼という選択肢もあります。
APS-Cの一眼レフより、フルサイズミラーレス一眼の方がよっぽど小型軽量です。

次に、価格について。

これは、水中撮影においてもAPS-Cのメリットと言えるでしょう。
ただ、ハウジングやストロボ等々、全部揃えようと思うと総額100万円前後になることが多いので、フルサイズとの価格差のインパクトは薄くなるのかもしれません。
もちろん、少しでも安ければそれはメリットなのですが。

小型軽量はあまりメリットにはならないけど、安さはそれなりにメリットにはなるよね。
というのが、個人的な意見です。


D7000 105mm Z-330  f8 1/100秒 ISO200

 

■水中マクロ撮影において大切なこと

さて、ここからが本番です。
いつも前置きが長くて申し訳ありません。

ここから具体的な水中マクロ撮影の話に入っていきます。
まず、一眼で水中マクロを撮るにあたってどんな写真を撮りたいのか、前提を共有しましょう。

ボケを活かして作品と呼べるような水中写真を撮りたい

みんながみんな「ボケ」にこだわっているわけではないでしょうが、少なくとも僕は「ボケ」が一眼を使うひとつの魅力だと思っていますし、フォトセミナーに来てくださる方からも「もっとぼかしたい」という相談をよく受けます。
なので次に、どうすればボケを作れるのかを考えてみましょう。

100㎜クラスのマクロレンズを使う

ざっくり言うと、水中で使えるマクロレンズには60㎜前後のものと、100㎜前後のものがあります。
僕はNikonユーザーなので105㎜を使っていますが、Canonなら100㎜、SONYなら90㎜ですね。
焦点距離が長いほど(○○㎜の数字が大きいほど)、ボケは作りやすくなります。
別にこれは僕の考えとかではなくて、事実です。

ぼかしたいなら60㎜ではなくて100㎜クラスを使いましょう。

じゃあ100㎜クラスのマクロレンズを使えば、すぐに柔らかいボケが作れるのでしょうか?
そんなに簡単なら、誰もフォトセミナーに来てくれませんよね。

細かい話は省きますが、遠くから魚を撮っても背景は中々ボケません。
しっかり被写体に寄ることが需要です。

ここまでの話を整理すると…

ボケを活かした水中マクロを撮るためには、一眼(APS-Cかフルサイズかに関わらず)に100㎜クラスのマクロレンズをつけて、被写体に寄って撮影する必要がある

ということです。
ここ、とっても大事なのでおさえておいてください。


D850 105mm Z-330  f5.6 1/250秒 ISO64

 

■APS-Cユーザーが直面する課題

100㎜マクロで被写体にしっかり寄って、ボケを生かした水中写真を撮ろう!
という話でしたが、これをAPS-C機で実践すると何が起きるでしょうか?

答えは
被写体が大きく写り過ぎる
です。

同じレンズをフルサイズとAPS-Cに装着した場合、APS-Cではフルサイズの1.5倍(Canonは1.6倍)の焦点距離に相当する画角になります。
焦点距離が長くなるいうのは、画角が狭くなるということ。
画角が狭くなるというのは、被写体が大きく写るということです。

「35㎜版換算で○○㎜」って、聞いたことがありませんか?
まさにその話なので、100㎜クラスのマクロレンズを使う前提で、各メーカーの35㎜版換算値を書いておきますね。

Nikon 105mm → APS-Cで使うと158㎜相当の画角
Canon 100mm → APS-Cで使うと160㎜相当の画角
SONY 90mm → APS-Cで使うと135㎜相当の画角

つまり、こういうことが起きます↓

「APS-Cに100㎜前後のマクロレンズをつけて、上出さんに言われた通り魚に最短撮影距離まで寄って撮ってみたら、被写体が画面からはみ出しちゃいました…」

悲しいですね。

実際にはみ出るかどうかは別としても、被写体が画面いっぱいに写ってしまったりします。
それが狙いならいいんですが、余白を生かしたいとき、構図を工夫したいときには少し引くしかありません。
でも、引けば引くほどボケなくなります。

これが、APS-C機をマクロ撮影で使う場合に陥るジレンマです。


D850 105mm Z-330  f5.6 1/250秒 ISO64

 

■使い勝手のいいフルサイズ機

「被写体が大きく写る」ことが、必ずしも悪い事ではありません。

めっちゃ小さな生き物でもそれなりに大きく写せる

というのは、APS-Cのメリットとも言えます。

「画面いっぱいに写る」とか「画面から生き物がはみ出る」というのは、被写体のサイズがそれなりに大きい時です。
大きいといっても、どれくらいかイメージがわかないですよね。

僕の感覚では、2㎝よりも大きい被写体は、APS-Cでは厳しいかな…という感じです。
ちゃんとした根拠のある数字ではないですし、必ずしも引いちゃダメって話ではないですよ。
あくまで僕なりのイメージです。

逆を言えば、1㎝に満たないようなウミウシが好きで、撮るのもそういう被写体がメイン。
という方だったら、APS-Cの方がむしろ適していると考えることもできます。

ただ、「フルサイズに100㎜マクロをつけても、あまり大きく写らないな…」という時には、クローズアップレンズをつけるという選択肢があります。
一方、「APS-Cに100㎜マクロをつけると、大きく写り過ぎるな…」という時には、自分が引くしかありません。

クローズアップレンズを使えばよりボケを生かしやすくなりますが(以前の記事参照)、引けばボケは作りづらくなります。

つまり何が言いたいかというと…

ボケを生かして色んなサイズの被写体を撮るには、フルサイズの方が使い勝手がいい

ということです。


D850 105mm SMC-1 Z-330  f11 1/250秒 ISO64

 

■まとめ

今日は、
「一眼で水中マクロを撮るにはAPS-Cとフルサイズどちらがいいか?」
というテーマでお話してきました。

僕自身もAPS-Cをずっと使っていましたし、否定する気は全くありません。
逆の視点からまとめると、APS-Cをオススメしてもいいかな?と思うのは、以下のような方です。

・予算的にフルサイズは無理
・ちっちゃなウミウシやハエモノが被写体のメイン

正直、こうして文章を読んでも、使ってみないとよくわからないですよね。
でも、使ってみて「あれ?思ってたのと違うかも…」となっても、時すでに遅しです。簡単に買い替えられるものではありません(一般的には)。

「フルサイズは上級者向け」ではないので、上記の2つに当てはまらない方には、僕は最初からフルサイズをお勧めしています。

ちなみに、「予算的にフルサイズは厳しい」ではなく「無理」と書いたのは、あえてです。
「ちょっと厳しいかな…」くらいなら、頑張りましょう。笑

それでは、今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!
少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

(2020.12.27更新)

 

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