水中ストロボはマニュアル発光かTTL自動調光か ~INON S-2000とZ-240の使用経験から~

 

こんにちは、上出です。

今日は、

「水中用ストロボ」

について、少し突っ込んだ話をしていこうと思います。

ストロボの基本的お話しについては
こちらの記事の中で解説していますので、良かったら見てみて下さいね。
参照:水中撮影の基本 ~ストロボはいつでも強制発光?~

一般的に外付けストロボの代表と言えば
「INONSEA&SEAですが、
僕は昔からINONのストロボを使用しています。

現在はメインがZ-240、サブがS-2000です。
(どちらも光ケーブル接続で使用しています。)

なのでここでは、
INONのストロボを例にとって解説してきます。

ただもちろん、SEA&SEAのストロボを使用している方もいらっしゃると思います。

できるだけINON以外のストロボにも
共通する考え方を紹介していきますので、
是非最後までお付き合いくださいね!

参考までに2社のストロボラインナップを↓

INON:http://www.inon.co.jp/products/strobe/lineup.html

SEA&SEA:http://www.seaandsea.co.jp/products/strobe/

 

今日は
「外付けストロボを使う際は、マニュアル発光とTTL自動調光どちらが良いのか?」
をメインテーマにお話ししていきます。

ただ、先にお伝えしておきますが、この質問に対する明確な答えはありません

僕自身もまだまだ試行錯誤中のテーマですし、水中のライティングはとにかく奥が深いです。
もしかしたら、一生悩み続けるテーマなのかなとも思っています。

そうは言っても、悩んでばかりいてもしょうがないですし、
ここでは諸先輩方の意見に触れながら、どのような選択がベターなのか
僕なりに考えていこうと思います。

 


(D750 + NIKKOR14-24mm + Z-240×2灯 f13 1/250秒 ISO500)

 

それではまず、
現状がどうなのかと言いますと、

僕は100%マニュアル発光です。

そして実は、数年前までは、
プロやセミプロの水中カメラマンは

みんなマニュアル発光で撮影している

と勝手に思っていました。笑

そんな僕の思い込みがひっくり返ったのは、
何かのインタビュー記事の中で、
水中写真家の鍵井靖章さんが
「TTL自動調光が出てきて撮影が変わった」
という趣旨のお話をされているのを見つけた時です。

(ダイバーの記事だった気がするのですが、見つけられませんでした…ごめんなさい。)

 

ご存知の方が多いとは思いますが、
鍵井さんと言えば優しい色使いのマクロから
迫力あるジンベイの写真まで何でも撮れる、
名実ともに日本を代表する水中写真家です。

彼の凄さは、ただ写真が美しいとか
迫力があるとかいう世界を超えて、
「作品や生き様がひとつの時代の流れを作り、
水中写真の新しい楽しみ方を提案している」

という点にあるんじゃないかな、と僕は勝手に思っています。

 

いうまでもなく、
僕も鍵井さんの作品や言葉から大きな影響を受けていますし、
尊敬しています。

 

話を戻しますと、その記事を読んだ僕は、
「え?鍵井さんでもTTLって使うの?」
と驚いたわけですね。笑

で、焦った僕は、水中写真家の先輩に聞いてみました。
「TTLって、使ってますか?」
と。

この時はまだ、
「何言ってんの上出君、マニュアル発光の一択だよ!」
と応えてくれるんじゃないかと、
淡い期待を抱いていたのですが、
返ってきたのは、
「TTLでほぼカバーできるよ!」
という、僕の幻想を完全に打ち壊す言葉でした。

そこからは自分でも何度か
TTLでの撮影を試みたんですが、
なかなかライティングがきまりません。
明るく飛んでしまう事はないのですが、
露出アンダーになってしまいます。

だんだんと、
もしかしたら何か使い方を間違えているのかな?

と不安になってきたので、
INONの方に聞いてみました。

「最近TTLを使い始めたんですが…
何だか撮れるのは暗い写真ばかりで…」

まるで初心者ですね。笑

でも、聞いて良かったです、
僕は全く知らなかったんですが、
INONのストロボはNikonの一眼レフと
組み合わせてS-TTL調光で使用すると、
露出アンダーになる傾向があるんだそうです。

気をつけるべき点は2つです。
カメラ側のフラッシュ調光補正を2/3段上げることによって適正露出が得られる(分割測光の場合)。
カメラの露出補正をマイナスに設定すると外付けストロボにもマイナス補正がかかってしまうため、
 カメラ側の露出補正は基本的にかけない方が良い。
 (僕には理論がよく分かりません。笑)

 

追記:2017/3/10
読者の方から早速教えていただきました!

Nikonのカメラは、露出補正と内臓ストロボの調光補正が連動しているそうです。

なので僕みたいに、絞り・SS・ISO感度を固定して撮影している場合は露出補正なんて関係ないと思いきや、
それがそのままストロボの調光補正に反映されていたらしいんですね。

つまり、カメラをマニュアルモードに設定して、調光補正をかけずに露出補正を-1EVに設定すると、
実際には露出補正はかからず調光補正が-1EVかかるそうです。

純粋に僕の不勉強なのですが、
普段から僕と同じようにカメラもストロボもマニュアルで撮影している方は
意外と知らなかったのではないでしょうか?

Kさん、わざわざご連絡をいただきありがとうございました!

 

「説明書に書いてくれよ!」
という言葉をグッと呑み込み、

僕は勇気を出してもう一つの質問をぶつけてみました。

「最近TTLの精度も上がってるとは思うのですが…
僕は作品づくりにはやっぱりマニュアルかなと思ってるんですけど…」
すると、予想外の答えが返ってきたのです。

「もちろん作品を撮るにはマニュアルがお勧めですよ!」

と。
涙が出そうでした。

先ほどの露出アンダー傾向の話も含めて、ここではあくまでINONの一社員の方が口頭で教えてくれた話ということで紹介しますが、
・壁に向かってカメラを構えている時にはある程度正確なTTL調光が得られるが、壁に穴があったとたんに精度が一気に落ちる。
・カメラは青い光とストロボの光を区別できないため、ワイド撮影ではTTLの精度がかなり落ちる。
(INONではこれを微弱発光問題と呼んでいるそう。)

ということを解説して下さいました。

この辺りのお話は、TTLの原理上、メカ音痴の僕でも何とか理解できる話です。

INONの方のアドバイスを受けて、再度TTLで撮影してみたのですが、
確かに露出アンダー問題は多少は改善されたのですが、やはりどうも思い通りのライティングにはなりません。

というわけで、結果的に僕は現在100%マニュアルで撮影しています。
ここで、マニュアル発光とTTL発光の、メリット・デメリットを整理しておきましょう。

マニュアル発光のメリットは、
思い通りの光量が得られるという点です。

なので、調整に時間がかかったとしても、
自分のイメージ通りのライティングができます。

 

もちろん
「調整できる」
というのは
イチイチ状況に合わせて光量を調整しなければならない
というデメリットにもなりまよね。

それをめんどくさいと思うかどうかは人それぞれですが、
現実的に困る場面があるとすれば、
砂地のハゼにじりじりと近づき、
寄り切ったところで光量を再調整したいけど、
手を動かすとハゼが穴に隠れてしまいそう

という時や、

高速で泳ぐサメが突然現れて
そもそも調整するタイミングがない

という時なんかが当てはまると思います。

 


(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm + S-2000×2灯  f8.0 1/160秒 ISO160)

 

一方TTL調光は、
自分で調整する必要が無いため、
とりあえずどんな場面でもそれなりの加減で発光してくれます。

なので、先ほどのマニュアルでは困りそうな場面では活躍するでしょうし、
運よく思い通りの発光をしてくれる可能性はあります。

ただ、

何枚撮っても思ったような光量で発光してくれない
というリスクがあるんですね。

僕の場合は、ずっとマニュアル発光で撮ってきた経験のおかげもあるのでしょうが、
最近は被写体や環境によってある程度光量の予測が立つため、
マニュアル発光でイメージから大きく外してしまうことはそんなにありません。

ストロボの光量を調整する余裕がなければ、
カメラの絞りやISO感度を調整して辻褄を合わせる

というスタイルで今のところは成り立っています。

この時なんかは最後まで苦戦しましたが…


(D750 + NIKKOR14-24mm + Z-240×2灯 f11 1/160秒 ISO400)

 

ライティングに、答えは無いんだと思います。

ストロボがバチっと当たっている写真が好きな人もいるし、
当たってるか当たってないかくらいの自然な写真が好きな人もいます。

実際にTTL調光で撮影している水中写真家がどれくらいいるのかも、
僕は知りません。

僕自身これからも検証を続けますし、
それぞれの撮影スタイルや目的に合った
ストロボの使い方があるんだと思います。

 

 

それでは、今日もここまで
読んで下さりありがとうございました!
少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

 

(更新:2017.3.9)

 

 

ブログランキングに登録してます。
記事が参考になりましたら、応援クリックをいただけると嬉しいです!
(下のバナーを1回ずつクリックしてください↓)

 

にほんブログ村 写真ブログ 水中写真へ

 

 

5 Responses

  • TTL調光の話、私も全く同じことをある水中写真家さんから聞いたことがあります。

    上出さん、ニコンだったんですね!自分もニコンです。そしてマニュアル発光です(汗)
    大体このくらいの光量で上手く撮れるっていうのは距離感で分かるようになったので、ずっとマニュアルなんですよ。

    でも、一発目からしくじれない被写体の場合、経験値や理論が豊富でないとマニュアルは危険すぎますよね。
    それで逃げられたことが何度もあります。

    自分は作品作りのためと称して、TTLを使うのをある意味『サボって』いますよ(汗)
    このままじゃいかんなぁ、TTL使ってみようと思います。

    • divedogさんもNikonをマニュアル発光でお使いなんですね!

      僕も外したくない場面のマニュアル発光はかなり悩みますが、どちらかというとマクロは弱めにたいて、白飛びNGアンダーOKくらいで撮っています。

      一方ワイドは強めにたく傾向があります。
      というか、ガイドナンバー20のストロボでワイドを撮る時はほぼフル発光です。
      (ワイドマクロ的に撮る時は調整しますが…)

      ただ、Z-240でフル発光するとアジの群れとかカメの顔とかは飛んじゃうことは結構あるので、TTLの方が良かったのかなあなんて思う事も確かにあります。

      僕も正直言って、TTLは逆にめんどくさく感じてしまっていたところがあるので、これからもう少し見直してみようと思っています。

      使いこなせて使わないのと、ただ使えないのは違いますものね。笑

  • 上出 俊作 :
    そう言っていただけるのが何よりうれしいです!

    白飛びするのが嫌でカメラの設定を-0、3 か-0,7にしてストロボはTTLオートで撮っていました。ギンガメなんかは丁度良い感じ光が当たりますが光が足りないなぁってずっと思っていたんですよ。ありがとうございます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です