水中用ストロボ「INON Z-330」の実力を探る ~ワイド編~

 

こんにちは、上出です。

今日は、

イノンZ-330の実力を探る

というタイトルで、
水中ストロボのリアルなレビューを
お届けできればと思います。

2017年12月24日、
INON製ストロボのフラッグシップモデルとして、
Z-330は発売されました。

発売当初から、

「かなりいいらしいよ…」

という噂を耳にした方も多いと思います。

 

僕はちょっと出遅れて、
2018年の春くらいから使っていました。

ようやくメリット・デメリットの検証が終わった!

というわけでは別になくて、
なんとなくそろそろ書こうかなあと思い、
この度筆を執った次第です。
(あえて言う事でもないですが。)

 

先日アップした記事にも書きましたが、
僕は元々けっこうな機械音痴です。

思い通りの水中写真を撮るために、

ブログやフォトセミナーを通して
水中写真のあれやこれやを伝えるために、

出来る限りの情報収集はしていますが、
それでも中々メカアレルギーは抜けません。

なので、撮影機材の比較テストを
厳密にやろうという気にはなりませんし、
そういう事が得意な方は他にちゃんといるので、
あえて自分がやる必要はないかなと思っています。

 

今日はそんな僕がお届けするレビューですので、
できるだけ小難しい話は抜きにして、

Z-330って実際はどうなの?

という話を、
主観的・感覚的にしていきたいと思います。

 

そうは言っても、この記事を書くにあたり
情報の正確性はきちんと担保したかったので、
INONの担当者さんとお話はさせていただきました。
(ご丁寧に解説してくださりありがとうございました。)

でももちろん、
頼まれてレビューを書いているわけではありません。
(このブログにそういう記事はひとつもありません。)

Z-330のレビューを書く旨もお伝えしましたが、

「好きに書いてください。」

と背中を押していただきましたので、
お言葉に甘えて好きに書かせていただきます。笑


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f13 1/100秒 ISO320)

 

本題に入る前に、まずひとつ、
前提を共有させてください。

僕はTTLを使いません。

何度も書いていると思いますが、
大事なことなのでここでも書きます。

 

これから書くZ-330の解説は、
特に断りがない限りマニュアル使用時の話です。

TTLの調光精度はどうか?

というのは、
ストロボを評価する上ではとても大事な項目だと思いますが、
その点を無視したレビューであることをご理解くださいませ。

 

それでは早速、内容に入っていきましょう。

ワイドで使用する時とマクロで使用する時は、
ストロボに求める要素も若干違ってきますので、
それぞれのケースに分けて解説しようと思います。

どちらの話も結構ボリュームがあるので、
2回に分けてレビューする事にしました。

前編の今日は、
ワイド撮影に焦点を当てていきます。

 

■水中ワイド


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f16 1/200秒 ISO250)

 

「ドームレンズで大光量と水中照射角度110°を両立」

これが、メーカー製品ページの
「特徴」の一番上に掲載されている文言です。

 

つまり、Z-330の特徴は、

「大光量」と「照射角110°」

の2つであると受け取ることができます。

※もちろん「ドームレンズ」も特徴ですが、
これは上記の2つを達成するための「手段」なので、
ここでは「なんか凄いな」と思うくらいでいいかと。

 

そして、この2つの特徴は、
どちらかと言うとワイド撮影で生かされるはずです。

ですのでまずは、
ワイド撮影時に僕がこの2点をどう感じたか、
という点から、レビューを始めようと思います。

 

「大光量」

Z-330のガイドナンバー(GN)は33です。

SEA&SEAのYS-D2がGN32、
Z-330の前モデルのZ-240がGN24、

ですので、現行水中ストロボの中では
最もGNが大きい事になります(2019年1月現在)。

 

ちなみに、GNというのは、
ストロボの光量の単位です。

GNが大きいほど、
最大光量が大きいというだけです。

詳しく知りたい方は、
以下のページがわかりやすいかなと思います。

ストロボの光はどこまで届く?ガイドナンバーを使った簡単な計算方法

 

話を戻します。

Z-330は他の製品と比べても
「大光量」だということがわかりました。

ここで一度立ち止まって、
考えて欲しいんです。

本当に、光量ってそんなに必要なの?

という事を。


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f11 1/250秒 ISO400)

ロウニンアジの写真を例にとって解説します。

写真の感想はいったん置いておいて、
カメラ・レンズの設定を見てください。

このブログではできるだけ
設定の詳細まで掲載していますが、
これまでもチェックしてくださっていた方は、

上出の水中ワイドってだいたいこんな設定だよね

と思われたのではないでしょうか。

 

さすが、鋭いですね。
その通りです。

 

これは個人的な考え方ですが、

絞りは絞って画面全体をシャープに写したい(f11~16)
絶対に被写体ブレを起こしたくない(できればSS1/250秒)

というのが、
僕が水中ワイドを撮る時に意識している事です。

 

こういう設定で、
普段ダイビングをする水深で(15mとか)、
ISO100なんかで撮影すると、

たいてい海が暗く写ります。

なので、
もちろんその時の天気、透明度、水深、
さらには上(水面・太陽)を向いて撮るのか
下(水底)を向いて撮るのかにもよりますが、

僕は海を自然な明るさの青で写すのが割と好きなので、
ISO200~500に設定していることがほとんどです。


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f13 1/250秒 ISO400)

 

もう一つだけ、前振りをさせてください。

水中撮影で何より大切なことは、
マクロだろうがワイドだろうが、
できるだけ被写体に寄ることです。
(もちろん、野生生物への配慮を忘れずに。)

寄らないと奥行き、立体感は出ないし、
寄らないとパリっとした写真は撮れません。

もちろん中々寄れない被写体もいますが、
個人的には寄れなかった時は自分の負けだと思っているので、
実際、寄れていない時はあまりシャッターを切りません。

 

さて、伝えたいことは何かと言うと…

先ほど紹介したようなカメラ・レンズ設定で、
被写体に手が届きそうなくらい寄って撮影する場合は、
GN20でも十分なライティングができます。

 

僕はZ-330が発売されるまで、
Z-240に拡散版をつけて使ってました。

だいたいいつも最初はフル発光に設定して、
様子を見ながら-0.5か-1.0で調整していたので、
メーカーHPから数字を拾ってくると、

フル発光 GN21
-0.5 GN17
-1.0 GN14

という発光量で使っていたことになります。
(拡散版分として公称値から-0.5EVで計算してます。)

 

サメの撮影など、どうしても接近できない被写体には
もっと大きい光量のストロボがあった方が良いのかな…

と考えたこともあるのですが、

遠くから大光量で発光させても
ハレーションが増えて使い物にならない

という印象もあって、

僕は今でも、水中ワイドでストロボを使う時は、
だいたいGN20前後で発光させています。

なので、Z-330の最大光量GN33を使う事は、
僕の撮影スタイルにおいては今のところはありません。

実際には、Z-330を

-1.0 GN23
-1.5 GN19
-2.0 GN16
-2.5   GN13

で使うことがほとんどです。


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f14 1/200秒 ISO200)

 

ここまで、

僕の現在の水中ワイド撮影においては、
GN33で発光させるケースはほぼない。

という話をしてきました。


でも、GN33のストロボなんて必要ない

と言いたいわけではありません。

むしろ、もうGN24のストロボには戻れません。

 

これから、その理由を2つ紹介します。

 

一つめが、リサイクルタイムです。

リサイクルタイムというのは、
ストロボが発光してから次の発光が可能になるまでの、
チャージにかかる時間のことを言います。

GN24のZ-240も、GN33のZ-330も、
フル発光時のリサイクルタイムは最短1.6秒です。

※電池によってリサイクルタイムが変わってきます。
最短1.6秒はエネループプロ使用時の値です。

 

どちらも「1.6秒」なので、
一見同じ性能に見えますが、

GNを合わせて比べてみると、
そこには大きな差があります。

Z-240 フル発光 GN24 リサイクルタイム1.6秒
Z-330 -1.0で発光  GN23(24が公称値上ないので23) 〇〇秒?

 

リサイクルタイムはフル発光時のデータしか
公表されていないので詳細はわかりませんが、

Z-330をGN23で発光させると、
リサイクルタイムは1.6秒よりだいぶ短くなるはずです。

熱を逃がす機構が優れているとか、
理由はいくつかあるのでしょうが、

本気を出していない分余裕があって、
ちょっとだけ休めばまたすぐ発光できる、

というようなイメージでいいと思います。

 

感覚的にわかる方も多いと思いますが、
水中ワイドのシャッターチャンスって、
本当に限られていますよね。

一瞬の勝負と言って良いと思いますし、
今日は全然ダメだなあと思っていたら、

最後の最後で立て続けに、
ダダダっとチャンスが続くなんて事も
日常茶飯事です。

この「ダダダ」の瞬間に、
ストロボのチャージが追いつかないと、
とっても悲しいことになります。

実際、Z-240を使っていた時には、
僕も何度も悲しい思いをしましたし、
リサイクルタイムを恐れるあまり、
1枚目のシャッターが中々切れないこともありました。

そういう意味では、

GNに余裕があるとテンポよく
シャッターを切れるようになるので、
シャッターチャンスを逃しにくくくなります。

これは、水中ワイド撮影においては
とてつもなく大きなメリットです。

 

ちなみに、
これはもう少し検証が必要なので
参考までにですが…

Z-330を-2.0で発光させると、
D850の連射にも3発はついてきます。
(GNを落とせばもっとついてきます。)

2発目、3発目と徐々に光量は落ちますが、
結果的に露出の違う3枚の写真が撮れるので、
後から好みの露出のカットを選べばいいとも言えます。

基本的には1枚目で決めにいってるのですが、
1枚目がうっかり露出オーバーになった時には、
2枚目を選んで編集すれば良いという感じです。

ただ、積極的にこういう撮り方を勧めようとは思いません。

被写体との向き合い方が、
少し雑になりがちな気もするので。

1枚に魂を込めて、
シャッターを切りたいものですね。


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f11 1/200秒 ISO400)

 

さて、もう一つ、

「GN33のストロボなんて必要ない
と言いたいわけではありません。」

と書いた理由を解説します。

 

以前書いたこちらの記事↓に、

SEA&SEAのエッジーな水中ストロボ「YS-D2」はどう使えば良いのか?

とても親切にコメントをしてくださった方がいました。

GN20では対応しきれず、GN32が必要なケース

としていくつか例を挙げてくださったのですが、
「水中ワイド」に関わる部分を抜粋すると、

 

水深2~3mから上に向かって撮る時で太陽が画角に入り、

太陽の白飛び面積を最小にしたいとき。

かつ被写体の反射率が低いとき。

が該当すると思います。
わかりやすい解説、本当にありがたいです。

 

文章だけだとイメージがわきづらいかもしれませんので、
写真を見ながら僕なりに解説していきましょう。

ちなみに、反射率が低い被写体として
「ナンヨウツバメウオの幼魚」や「メジナ」
を挙げてくださっていたのですが、

僕がそのような黒い魚を普段撮っていないので、
カメの甲羅側の写真で代替させていただきます。
(黒い魚ほど反射率は低くないと思いますが。)


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f14 1/250秒 ISO250)

 

水深は2~3m、天気は晴れ、
上を向いているとは言えないけど…
まあ、これでも説明はつくので良いでしょう。

ちなみに、全体的にモヤっとした雰囲気になっているのは、
物凄く濁っていて本当にモヤっとしていたからです。

Z-330をGN20前後で発光させているはずなので、
ここではGN20で発光させたと仮定します。

 

さて、この写真を見て皆さんはどう感じるでしょうか?

 

もしかしたら、左上の太陽の光の部分が、
ちょっと明るすぎて目障りに感じたかもしれません。

では、
太陽の白飛びをおさえるには、
海をもう少し暗くするには、
どうしますか?

 

答えは、

・絞りを絞る
・ISO感度を下げる

です。

両方いじっても構いませんし、
片方でも海は暗くなります。

ここでは仮に、絞りは変えずに
ISO感度を250から100に下げたとしましょう。

ざっくりのイメージですが、
こんな写真が撮れるはずです↓

左上の太陽の部分も、
背景の海も、どちらも暗くなりました。

でも、カメの甲羅も暗くなっています。

カメを暗くしたかったわけではないですし、
カメは最初の明るさがちょうどよかったので、

今度はカメの明るさを元に戻してあげるために、
ストロボを強くしないといけません。

このとき、GN20がフル発光のストロボでは、
対応する事ができないというわけです。

そういう意味でも、GN33のZ-330は頼もしいですね。

海の明るさを黒に近づくくらい暗くしても、
カメだけを浮かび上がるだけの光量があります。

大光量で発光させたいケースが、実際にあるんですね。

 

さて、
水中ワイド撮影における「大光量」のメリットは、

・GNが大きいストロボの方がパワーに余裕があり、
短いリサイクルタイムで発光させることができる

・良くあるシチュエーションではないけれど、
GN20以上で発光させたいケースも実際にある

の2つであるという話をここまでしてきました。

次は、照射角の話に移ります。

 

「照射角110°」

 

冒頭で、この記事を書くにあたって
INONの方とお話をさせていただいたと書きましたが、
実は、こんなやり取りがありました。

上出:
「Z-330はZ-240に比べて照射角が広く使いやすいように感じます。
でも、Z-240も拡散版をつければ照射角は110°ですし、
スペック上はZ-330と同じ照射角のはずです。
なぜ、Z-330の方が照射角が広いように感じるのでしょうか?」

僕は心の中でひっそりと思っていたのです。

「きっと、同じ照射角でも光の性質が違うとか、
INONが公表していないお宝情報があるに違いない…」

と。

しかし、僕の浅はかな期待はあっさり裏切られました。

INONの方:

「Z-330は水中での実測値が110°ですが、
Z-240は、陸上計測値が110°なのです。
水中は計測していないので詳細はわかりませんが、
拡散版なしで75°、ありで80°くらいだと思います。」

 

確かに、HPにも陸上とか水中とか、
ちゃんと書いてありました。

INONの方は恐縮しながら教えてくださいましたが、
僕が見落とし、勘違いしていただけです…
恥ずかしいですね。失礼いたしました。

 

Z-240(拡散版なし):陸上照射角100° 水中照射角約75°
Z-240(拡散版あり):陸上照射角110° 水中照射角約80°
Z-330:陸上照射角不明 水中照射角110°

というわけで、
Z-330はZ-240に比べると
かなり照射角が広がっています。

水中ワイド撮影の中でも、
画面の四隅にまで被写体が入るようなケース、
例えば魚の群れを撮る時なんかは、
照射角が広い方が圧倒的に有利です。

群れの中心だけでなく、
周辺部にもしっかり光が当たるので、
群れ全体のディテールを描写する事ができます。

実際に、ミジュンの群れを撮った時には、
綺麗に光が回るなあ…と感じました。


(D850 + Fisheye NIKKOR 8-15mm + Z-330   f11 1/250秒 ISO500)

 

一方、例えばサメを撮る時なんかは、
照射角の広さは直接のメリットとは言えなさそうです。

逆に、照射角が広すぎてゴミが写り込みやすい、
というデメリットが際立ってしまう可能性があります。

 

とは言っても、今のところ個人的には、
ゴミが写り込みやすいという感覚はありません。

ストロボライトカッターがうまく機能しているのか、
そういうわけでもないのか…どうなんでしょう。笑

少なくとも、
「照射角が広すぎて扱いづらいな」
と感じたことはないという事です。

 

ちなみに、照射角が広いという事は、
ストロボの向きが多少ずれていても
被写体に光がある程度は回るという事ですので、

サメのような被写体を撮る場合でも、
照射角の広さはメリットと言うこともできますね。

実際、ストロボの向きを完璧に合わせるのって難しいですし、
泳いでいる間に向きが変わっていたなんて事もありますので。


(D750 + NIKKOR 14-24mm + Z-240   f11 1/250秒 ISO400)

 

今日は、Z-330の特徴を、

・大光量
・照射角110°

という2つの観点から解説してみました。

水中ワイド撮影においては、
上記の2つは明らかにメリットになりますし、
実際の使用感としても、不満はありません。

水中ワイド撮影の第一選択は、
Z-330と言って良いと思います。

 

ちなみに、
「大光量」のメリットの解説に字数を割いてしまい、
「照射角110°」の方があっさりになってしまいましたが、
「大光量の方が重要」というわけではありませんよ。

むしろ個人的には、
「大光量」よりも「照射角110°」の方が、
撮影の幅を広げてくれたように感じています。

ある程度ごまかしが効くというのも、
実際には結構大きなメリットですしね。

 

さて、ここで書ききれなかった特徴は、
またマクロ編で触れようと思いますので、
楽しみにしていてください。

それでは、今日もここまで
読んでくださりありがとうございました。

少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

(更新:2019.1.14)

 

 

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