「なるべく寄る!」という考えでは水中写真はもうダメ~地球の海フォトコンテスト2017より~

 

いやいやいや、「なるべく寄る!」という考えでは水中写真はもうダメですね。

「接近イノチ(命)」という時代は終焉を迎えつつあり、こんなふうに余白を楽しむ方向にいくと思います。

もちろん、この作品のように、チビたちのキュートさや存在感もよく表現された上での話です。

 

地球の海フォトコンテスト2017 ビギナー部門 優秀賞 審査員作品評 鍵井靖章

こんにちは、上出です。

一週間ほど前、
地球の海フォトコンテスト2017の入賞作品が
Marine Diving webで公開されましたね。

ぜひ一度、上位入賞作品だけでも良いので
ザーッと目を通してみて下さい↓
Marine Diving web 地球の海フォトコンテスト2017 

 

どの部門もグランプリ、準グランプリ
の作品は「おぉー!」という感じですよね。

特にビーチフォト部門のムツゴロウなんかは
独自の視点と画作りへのこだわりを感じますし、

作者の方が泥だらけになりながら楽しく
撮影している様子が目に浮かんでくるようで、

写真を見ていて何だか
気持ちよくなってしまいました。笑

 

さて、今日は冒頭でいきなり
鍵井靖章さんの作品評を引用させていただきました。

何故そんな事をしたのかというと、
僕は今回のフォトコンの結果発表を見ていて

「審査員の方々の作品評から学べることが多いなあ」

と感じたからです。

 

ここでは(いつものように?)小難しい話はせず、
審査員の方々の何気ないコメントを出発点にして、

これからの水中写真の方向性

について、僕なりの考え方を
ゆるーく紹介していこうと思います。

 

では早速ですが、
コメントをもう一つ引用します。

マクロの写真は例年になく不作。

最近はカメラの機能が向上しており、接近してもピントが合ってしまうことが原因かもしれません。

せっかくいい被写体と出会っても、ただ拡大して撮るだけという作品が目立ちました。

 

地球の海フォトコンテスト2017 審査員総評 ネイチャー部門・環境部門 瀬能 宏

 

言い回しは多少違いますが、
お二人が言わんとしている事はおそらく同じで、

「ただ寄って大きく撮るだけではダメよ。」

ということだと思います。

え?でも

「水中写真の基本はとにかく寄ることだ!」

って、上出さん言ってませんでしたっけ?

 


(D750 + 105mm micro + Z-240×2 f5.6 1/200秒 ISO125)

はい、いつも言ってます。笑

ワイドだろうがマクロだろうが、
被写体にできるだけ寄るというのが
水中写真の基本であることは変わりません。

被写体から離れれば離れるだけ
写真からクリアさが失われていきますし、
マクロに関してはボケも作りにくくなります。

水中という特殊な環境においては。
「寄る」ことが「基本」なのは間違いありません。

そういった文脈においては、
鍵井さんや瀬能さんがおっしゃっているのは

「フォトコン入賞を狙うなら」

という前提の「応用編」だととらえるべきです。

おそらくお二人が言いたいのは
「何も考えずにただ寄るのはどうかと思うよ?」

「魚がちょうど画面いっぱいにおさまって満足してない?」

という事だと思います。

 

つまり、寄ること自体が良い悪い
という話ではないんですね。

実際、担当の審査員は別の方ですが、
自由部門のグランプリも準グランプリも、
これでもか!というくらい被写体に寄って撮影した作品です。

自由部門 上位入賞作品

明確な表現の意図を持って、
被写体との距離を決めることが大切なんですね。

最初のうちは、どれだけ被写体に寄れるかにこだわる

被写体に寄ることの重要性やテクニックをおさえたら、
そこからは勇気を出して引くことで創作の幅を広げる

というのが僕なりの理解です。


(D750 + 105mm micro + Z-240×2 f9 1/160秒 ISO320)

 

さて、基本や応用がどうこう
という話はいったん終わりにして、

もうひとつここで触れておきたい話題があります。

冒頭の引用を思い出して欲しいのですが、
水中写真家の鍵井靖章さんは、

「接近イノチ(命)」という時代は終焉を迎えつつあり、
こんなふうに余白を楽しむ方向にいくと思います。

とおっしゃっています。

もう一度言います。

鍵井靖章さんがおっしゃっています。

 

別に僕が鍵井さんの熱烈なファンだ
というわけではありません。笑

(もちろん尊敬していますし、
写真集も何冊か持っています。)

何が言いたいのかというと、
鍵井さんはこれまでも水中写真の
新時代を築いて来られた方ですし、

現在も名実ともに日本一の水中写真家で、
オピニオンリーダーだという事です。

例えばエビちゃんがインタビューで

「今年の秋はショート丈のGジャンが流行ると思います!」

と言えば、

ちゃんとその年の秋には
ショート丈のGジャンが流行ります。

それと同じです。

鍵井さんが

「余白を楽しむ方向に行くと思います。」

と言えば、

時代はその方向に進んでいきます。

まあ、
水中写真業界がファッション業界ほど
トレンドに敏感だとは思えないので、

みんなが一斉にバルーンスカートを履く
みたいな状況にまでなるとは思っていませんが。笑

それでも、ひとつの流れとして
知っていても面白い情報かなと思い、

今日は取り上げさせていただきました!

 

ちなみに、被写体から離れて
大きな余白を作るのは簡単ですが、

それを作品として仕上げるというのは、
実際には結構難しいですよ。

これも良い機会ですので、
いつか水中で思い出したら試してみて下さい。

 

それでは、今日もここまで
読んで下さりありがとうございました!

少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

 

(更新:2017.4.28)

 

 

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