こんにちは、上出です。
今日は、水中写真に必要な画素数について、色々な用途を想定して考えていきたいと思います。
今年の6月、富士フイルムフォトサロン東京で写真展を開催させていただきました。
展示した最も大きな作品は、横1mです。
ちなみに、写真プリントって普通は四切とかA3とか既定のサイズで作りますが、写真展では会場(壁)の長さ大きさに合わせてプリントを作ることもあります。
なので、長編1000mmという何の規格にも当てはまらないサイズで作ることになったのです(全倍に近いかな)。
写真展に来てくださった方は記憶にあると思いますが、正面にドーンと展示していた6枚の写真ですね。
では問題です。
長辺1mのプリントには、何画素必要だと思いますか?
実は、僕もそれがよくわからず、写真展前はけっこう不安でした。
でも写真展を終えた今は、「とりあえず2400万画素あればOK」と言えます。
もちろんどんな写真をどう現像したかによもりますが、それはまた今度。
というわけで今日は、「2400万画素でOK」となった経緯と、そこから考えるカメラ選びの話をしていきます。
D850 105mm Z-330 f7.1 1/250秒 ISO64
■解像度とは?
まず、「解像度」という言葉について簡単に見ていきましょう。
この言葉を理解できないと、印刷・プリントの話ができないので。
解像度とは通常「dpi」という単位で表します。
ドットパーインチ、つまり1インチ(2.54cm)あたりどれくらいドット(ピクセル)があるか。
説明が長くなりそうなので、他のサイトに譲ります。笑
ちなみに、印刷・プリントをしない方にとってはこの辺の話はわからなくても困らないので、面倒でしたら飛ばしてください。
ようは、画素数とプリントサイズが決まれば、解像度(dpi)は勝手に決まるよということです。
Lightroomで解像度350dpi(Lightroomはppiだけど)でJPEGに書き出したからって、350dpiでプリントできるわけではないんです。
なので、Lightroomで書き出すときに解像度だけ指定してもあまり意味はないと思うのですが…
仕事でデータを納品するときに「○○dpiで」と指定されることは確かにあるのですが、dpiだけ自分で勝手に入力する意味がいまいちわかりません。
どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら、ご連絡お待ちしています。
話を戻しますが、基本的には、SNSやHP、ブログなどに写真を掲載する際には、dpiなんて気にする必要はないと思います。
その媒体に合った画素数だけ考えればOKですね。
ある程度の画素数がないとWEBでも荒く見えるし、逆に画素数が大きすぎると重くなるし、という兼ね合いではないでしょうか。
ではプリント・印刷の時はどうかというと、画素数は大きければ大きい方が有利だと思います。
ちなみに、写真展でも写真集でも、どちらも最初から最後までdpiの話は出てきませんでした。
なので、解像度(dpi)の知識って、知ってた方がいいけど、知らなくてもなんとかなるのかもしれません。
やばかったらプリンティングディレクターの方が教えてくれるでしょう。きっと。
まあでもせっかくなのでもう少しちゃんと考えましょう。
一般的に、雑誌などの手に取るサイズの印刷物では300~350dpi、ポスターなどの大きく掲示する印刷物では200dpiくらいは必要と言われています。
なぜ大きい印刷物の方が解像度が低くていいかというと、遠くから見る前提だからですね。
で、先ほど書いたように画素数とプリント・印刷サイズが決まればdpiは計算できます。
逆に、最終的なサイズと求めるdpiが決まれば、必要な画素数も計算できます。
簡単に計算できるHPがありましたので、興味があれば使ってみてください。
■実際に必要だった画素数は?
さて、僕が使っているカメラはD850、つまり約4600万画素です。
ワイドはあんまりトリミングしないですが、マクロは場合によってはバサッとトリミングします。
写真展では横1mのプリント作品を6点用意しましたが、そのうち1点はけっこうトリミングしていて、「6152×4157=2557万画素」でした。
この写真ですね↓
D850 105mm Z-330 f81 1/250秒 ISO64
先ほど紹介したサイトで計算してみると、「6152×4157=2557万画素」を長辺1000mmのプリントにすると、解像度は約150dpiになります。
6000×4000=2400万画素というカメラも多いので、この後は2400万画素ということで話を進めましょう。誤差の範囲なので。
さて、ここが僕にとっては写真展前の不安ポイントでした。
「150dpiで綺麗にプリントできるのかしら?」と。
写真展で大きなプリント作品を作る場合には、色校正とは別に、解像度チェックというのもあるんですね。
僕はその存在を知らなかったので、「おお、こんな素敵な工程があるのか!」と感動しました。
こんな感じで、ピントの合っている部分だけをプリントしてくれます。
(大きなプリントをそのまま作ったらコストかかりすぎるので。)
このテストプリントを見て「全然行ける」と思いました。
ハゼの目の周りのギラギラ感が、荒れずにきれーに出てたんですよね。
ぜひこれは会場で見て欲しいのですが(10月の大阪展で)。
この時点で、2400万画素でも、長辺1m前後のプリントなら問題ないことがわかりました。
ただまあ一般的には200dpiくらいあった方がいいとはよく聞きますし、ケースバイケースなのかもしれません。
ちなみに、何dpiだろうが、プリントするとピントがずれてるのはめちゃ目立ちますからね。
dpiよりもピント合わせの方が重要だというのも、写真展&写真集から得たひとつの教訓でしょうか。
■水中撮影に適したカメラは?
2022年8月現在、SONYからα7Ⅳという6100万画素のフルサイズミラーレス一眼が発売されています。
おそらく、NikonからもCanonからも、今後6000万画素を超える超高画素機が発売されるでしょう。
6000万画素、個人的には使ってみたい気持ちはあります。
これまで以上に生き物の細部が解像されたらどんな風に見えるんだろうか、という好奇心がひとつ。
今後は長辺1m以上のさらに大きなプリント作品を展示する可能性があるということが、もうひとつ。
でも、はっきり言って、6000万画素越えのカメラはほとんどの人にとって必要ないと思います。
画素が増えれば増えるだけ、高感度耐性が弱くなるとか、ブレが目立ちやすくなるとか、細かいデメリットはいくつかあります。
が、多くの人にとって直接的に大きな問題になるのは、撮影データの大きさです。
・カメラに入れるSDカードやCFexpressの容量を大きくする必要がある
・RAWデータを保存しておくハードディスクやクラウドの容量を大きくする必要がある
・6000万画素超えのRAWデータをサクサク現像できるスペックのPCを用意する必要がある
という三重苦に陥ります。
お金が余っていればいいですが、正直扱いやすいデータとは言えません。
カメラ自体も高画素機って高いですしね。
D850 8-15mm f16 1/500秒 ISO800
先ほど、2400万画素で長編1mのプリントに耐えられた、と書きました。
一般的に、1m以上のプリント作品を作って展示あるいは販売したいという方は稀でしょう。
そう考えると、NikonZ6ⅡとかCanonR6とか、2000~2500万画素くらいのカメラが使いやすいように感じます。
ただ、元が2400万画素とか2000万画素くらいだと、バサッとトリミングしたときに1000万画素前後になっちゃうんですよね。
これだとちょっと、印刷・プリントのことを考えたときには、心許ないようにも感じます。
そうは言っても、解像度が150dpiでいいとするなら、1000万画素あればA2サイズ(594mm×420mm)にはプリントできるのですが。
以前どこかで書きましたが(どこで書いたか忘れた)、僕にとってD850のような高画素機を使うメリットはそこなんですよね。
半分くらいにバサッと切っても、2400万画素前後残るというのが魅力なんです。
そういう意味では、4000万画素台のカメラっていうのは、将来的にプリントや印刷まで考えてる人にとっては安心なのかなと。
ちなみに僕は、普段トリミングをする際も、できるだけ2000万画素以上は残すようにしています。
2000万画素以上あればそれなりに大きなサイズでプリントしても綺麗に見える感覚があったからです。
結果的に、今回の写真展で、自分の感覚がそれほど間違っていなかったことがわかりました。
もっと言うと、どんなに切っても1600万画素以上残すようにしています。
1600万というのは、くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。1600万という数字が。
というのは冗談として、たぶん最初に買ったカメラがD7000で、1600万画素だったからだと思います。
これだと本当に小泉さんくらいのふわっと感になってしまいますが。
もうちょっとそれっぽい話をすると、1600万画素をA4サイズで印刷すると、約300dpiになります。
つまり1600万画素あれば、A4の写真集で綺麗に印刷できるということです。
下のクロダルマハゼの卵の写真が、ちょうど1600万画素くらいです(このブログには圧縮して貼り付けてます)。
ちゃんと根拠があるんですよ。後付けですが。笑
D850 105mm SMC-1 Z-330 f11 1/250秒 ISO64
今後どんなカメラを選ぶべきかという視点で話をまとめてみましょう。
■超高画素機:6000万画素越え
・ほとんどの人にとってオーバースペック
・将来的に個展で大きなプリントを展示したいという夢があるなら選ぶのもあり
■高画素機:4000万画素前後
・多くの人にとっては必要のない画素数と言えるが、トリミング耐性を考慮すると使いやすいとも言える
・将来的に個展を開催したい、写真集を出したいという思いがあるなら、余裕があってちょうどいい画素数
■中画素機?(呼び方わからない):2400万画素前後
・印刷やプリントはせずWEB使用前提なら十分な画素数
・トリミングしなければ長編1mのプリントに耐えられるし、半分にトリミングしてもA2サイズくらいまでは耐えられそう
・仲間との合同展にプリント作品を出すくらいなら十分だし、個展も構成次第で可能
という感じですかね。
WEB使用を前提にするなら高画素機は全く必要ないですが、実際にはパソコンで等倍に拡大してみた時のぞくぞく感とかもあるので、一概には言えません。
ほら、ハゼの目を拡大してみた時に、「こんな模様だったんだー!」と、興奮するときあるじゃないですか。ありますよね?笑
僕は6000万画素超えのカメラも試してみるかもしれませんが、やはりデータの大きさが不安です。
あと、自然光で撮影することも多いワイド用のカメラとしては、高感度耐性が弱くなりがちな高画素機は合わないと思っています。
クジラとかマングローブとか、どうしてもISO感度を上げざるを得ないことが多いので。
個人的には、こういう撮影には3000~4000万画素のカメラがいいかな。
逆を言えば、超高画素機はISO感度を上げないマクロ撮影で使ってみたいですね。
見えていなかった世界を見てぞくぞくしたいですし、時にはバサッとトリミングしたいですし。
それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました。
少しでもカメラ選びの参考になれば嬉しいです。
そうそう、実際にプリントを見て、解像度を見てみたいという方は、10月の大阪巡回展にお越しください。
10/12,13,14以外は終日在廊している予定ですので、気軽に話しかけていただけると嬉しいです。
ちなみに、写真展には行けないけど生のプリント作品が見たい!という方は購入も可能です。
会場で展示している作品は一点物として販売していますし(東京展で売れてしまったものもありますが)、その他の作品はオーダーで制作可能ですので是非。
陽だまりスタジオオンラインストアからご覧いただけます。