クジラの水中撮影用レンズ【2024年版】

 

こんにちは、上出です。

最近2日に1回くらい「クジラの水中撮影にはどのレンズがオススメですか?」と聞かれるので、ここにまとめておきます。

 

以前にも同じような記事を書きましたが、この1,2年で、使うレンズも、レンズに対する考え方も大きく変わりました。

きっとこれからも変わっていくのでしょうが、ひとまず2024年時点の僕の考えを書いておこうかと思います。

 

「どのレンズを使うか」という選択は、「世界を(被写体を)どう見るのか」に直結します。

つまり、「このレンズを使いましょう」と言われるということは、「世界をこう見てくださいね」と言われているのと同じことです。

個人的には、そういうのは面白いとは思いません。

この記事もあくまで参考程度に見ていただいて、最終的にはご自身で色々なレンズを試してもらえたらいいなと思います。

僕の使っているレンズを基準にして話を進めますが、焦点距離(画角)が同じならイメージは同じですので、ご自身が持っている(買おうとしている)レンズに当てはめて読んでみてください。

 

■フィッシュアイ(35㎜版換算で15㎜前後)

D850  AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED  f9 1/640sec ISO250

 

おそらく、クジラの水中撮影で最も広く用いられているレンズがフィッシュアイではないでしょうか。

僕もこれまでずっと使ってきましたし、一般的な第一選択と言っていいでしょう。

 

なにより、絞りをそんなに絞らなくても(f5.6とかでも)深い被写界深度が確保できます。

解像感という意味でも、他のレンズとは比べ物になりません。ビシッと写ります。

クジラがとっても近い時に全身を入れたいなら、フィッシュアイ以外に選択肢がありません。

半水面も、フィッシュアイが撮りやすいというか、他のレンズだとかなり難しいですね。

 

じゃあいいことばかりなのかと言うと、もちろんそんなことはありません。

まず、画角がとっても広いので、クジラが遠ければ米粒みたいにしか写りません。

これは仕方ないことなので、割り切って使うしかないですね。

 

クジラが小さいだけでなく、画角が広いということは、周りの人のフィンなんかもバンバン写ります。

人を写さないようにするためにはみんなよりも前に出るしかないのですが、みんなが前に出ようとしたらそれはそれは何とも言えない状況になります。

ポジショニングの上手さもあるにはありますが、ある意味でフィッシュアイは、「人が写っても仕方ない」くらいの気持ちで使うのが健全なのかもしれません。

 

ちなみに僕は、2024年のシーズンでは(もう1カ月半が過ぎた)、実は一度もフィッシュアイを使っていません。

なぜかと言うと、今後写真展や写真集でクジラの作品を発表しようと思った時に、「これ以上フィッシュアイの画はいらないな」と思ったからです。

フィッシュアイで撮影した写真って、言葉を選ばずに言うと、どれもおんなじに見えるんですよね。

それは自分が過去数年撮ってきた写真を比べてもそうだし、他の方の作品を見ていても感じることです。

もちろん撮影者にとっては色々なストーリーや思いがあるのですが、第三者が見たらどれだけの差があるんだろうか、と。

 

フィッシュアイじゃなきゃ撮れない写真がありますし、フィッシュアイはクジラの撮影に必要なレンズです。

僕もフィッシュアイで、お気に入りの作品をいくつも撮ってきました。

でも、クジラの撮影をそれなりに続けてきて、フィッシュアイでクジラの作品を残すことの難しさを今感じています。

D850  AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED   f7.1 1/640sec ISO250

 

■14-24mm

D850  AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED   f5.6 1/400sec ISO6400

 

ここ数年、14-24㎜はたまにしかクジラの撮影で使っていません。

なぜかというと、特に14-16㎜くらいの超広角域で撮影した時にクジラがビヨーンと伸びてしまって、心地よくないからです。

クジラが近い時にはより顕著にビヨーン感が出るので、個人的には、クジラが近い時に全身を入れようとするレンズではないですかね。

 

20-24㎜くらいだとそれほど伸びないので(とはいえ伸びますが)、14-24㎜を使っていてクジラが近い時には、思い切って全身を入れずに切り取るのもありかなと思います。

あるいは、光や環境を主役にして、クジラは小さく、雰囲気重視で画作りするのが、個人的には好きです。

フィッシュアイに比べると圧倒的に解像しないという意味でも、個人的にはクジラをドーンと撮るレンズではないのかなと。

 

こんな書き方をすると「なんで使うの?」と思われる方も多いかもしれません。

でもやっぱり、広く撮りたくて、水面も光も真っ直ぐ切り取りたい時があるんですよね。

そして、僕の使っている14-24㎜に関して言うなら、ファインダーを覗いた時のドキドキ感はNo.1なのです。

これからもたまに使うと思います。

D850  AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED   f16 1/400sec ISO2500

 

■35mm

D850 AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED    f6.3 1/500sec ISO3200

 

今年一番使っているレンズが、35㎜単焦点です。

はっきり言って、めっちゃ気に入っています。

 

元々ダイビング中のワイド撮影でたまに使っていたのですが、正直、「めっちゃ難しいな」と感じていました。

ある意味、コンデジでただ撮った写真のようになりがちなんですよね。

フィッシュアイや超広角のデフォルメ感にこれまでどれだけ助けられていたのかを思い知らされました。

 

クジラの撮影でも元々フィッシュアイや14-24㎜を使っていたので、35㎜でクジラを撮影し始めた頃は「だいぶ大きく写っちゃうな」と感じました。

でも、使い続けていくうちに、なんだか自分の感覚とフィットしてきたんです。

見ている景色がそのまま切り取れるような感覚。

クジラが存在する世界の空気感を写真に乗せられそうな気配。

そんなものを感じました。

 

35㎜のいい所を、具体的に書いておきます。

一番は、クジラとの距離を確保できることですね。

元々まあまあ大きく写るので、「もっと寄らなきゃ」という思いが湧いてきません。

クジラに与えるストレスやホエールスイムの持続性という意味でも、クジラと一定の距離を保つことは必要なように感じています。

さらに自分にとっても、寄らなくても撮れるし人も写らないというのは、大きな心の余裕になります。

 

僕自身、去年まではフィッシュアイを積極的に使っていたので、人を入れたくないという思いが強く、人が入ると「入っちゃった…」とストレスになっていました。

きっと、人を入れないために自分だけすーっと前に出たこともあったと思います。

そういう意味でも、35㎜はストレスフリーでいい感じです。

 

それから、これは最近感じるようになったことなのですが、35㎜を使っていると奥行き感が出ます。

フィッシュアイを使っていると、良くも悪くも被写界深度が深く、パンフォーカスに近い画になります。

一方35㎜は、ピント面の解像度はけっこうあるのですが(超広角以上フィッシュアイ以下)、被写界深度がそんなに深くないので、画面の中にボケている部分が生まれます。

ワイドでもボケがあると奥行きとか立体感が生まれるんだな、と、最近初心者みたいなことを思った次第です。

 

デメリットは、例えば親子エスコートとか3頭以上いるような状況では、全ての個体を画面に収められないということでしょうかね。

大きなデメリットと言えばそうですが、まあ、逆を言えばデメリットはそれくらいかもしれません。

ちなみに1頭でもめちゃ近かったら画面に入りませんが、普通に切っちゃえばいいと思っているので、個人的にはデメリットではありません。

D850 AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED    f5.6 1/640sec ISO1400

 

■60mm

D850  AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED    f4 1/2000sec ISO6400

 

去年からマクロレンズをクジラ撮影に使い始めました。

ちなみに僕は、マクロ撮影では105㎜しか使わないので、60㎜は完全にクジラ用のレンズです。

最初は無謀かなと思っていましたが、いざ使ってみると、これはこれでかなり面白い。

 

最初はクジラの一部だけを切り取るようなイメージだったのですが(それもやるけど)、意外とそんな極端な使い方ではなく、普通に?クジラが撮れることに気がつきました。

というか、これまで挙げてきたレンズに比べると、実は60㎜が一番見たままを切り取れるんです。

 

60㎜を使ってから35㎜を使うと、「あれ?35㎜の画角ってこんなに広かったっけ?」と思います。

実は、被写体がまあまあ大きく写るはずの35㎜でも、肉眼で見た景色、人が認識している画角よりも広いんですよね(少なくとも僕はそう感じた)。

陸写真の世界では「50㎜が標準レンズ」とよく言うじゃないですか。あれは、肉眼に近い画角だからですよね。

 

結局水中でも同じなんだな、と、60㎜を使ってみて思いました。

まあちょっと狭いんですが。

それでも、僕が水中撮影に使っているレンズの中では、一番実際に見て感じた世界に近かったです。

 

とはいえもちろん、普通にクジラを撮ろうと思ったら難しいですよ。

みんなにオススメはしません。デメリットは、普通に撮れないことです。

もはや普通に撮れると言ったり撮れないと言ったり、自分でも何を言ってるのかわかりません。

使い続けていると宝物を拾えるかもしれないレンズ、とでも言っておきましょう。

 

ちなみに、ピント面はちゃんと解像しますが、もちろん被写界深度は浅いです。

あと、広角レンズに比べたらめちゃくちゃブレやすいので、シャッタスピードを何秒にすればいいのか毎日悩んでいます。

D850  AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED    f4 1/1000sec ISO720

 

というわけで、僕がクジラの水中撮影に使っているレンズを紹介していました。

全く同じレンズではなくても、同じ焦点距離のレンズだったらだいたい同じ感覚でしょうから、ご自身のレンズに当てはめてみてください。

 

ちなみに、今日の話でいくと「50㎜単焦点もありなのでは?」と思われる方もいるでしょう。

僕もありだと思うのですが、実際に試した方の話を聞くと、ポートとの相性が難しかったり、AFがイマイチだったり、ということだったので、僕は使っていません。

どなたか使っている方がいたら、どんな感じか教えてください。

 

さらっとではありますが、ひとまず2024年現在思っていることは書きました。

さらに突っ込んだ話は(あるのかわからないけど)、また会ったときにでも聞いていただければと思います。

 

それでは、今日もここまで読んで下さりありがとうございました。少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

クジラの撮影に関する話は「カテゴリー:クジラ」にまとめてありますので、興味があれば他の記事も読んでみてください。

それでは、今シーズンも残り1ヶ月、皆さんに素敵な出会いがありますように!

 

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