こんにちは、上出です。
今日は、「ホエールスイムで選択すべきレンズとは?」というテーマについて解説していきます。
この時期になると、たくさんの方から「クジラを水中で撮影するにはどのレンズがお勧めですか?」という質問をいただきます。もちろんツアー参加者の方にはちゃんと回答していましたが(自分ではそのつもり)、みんなに同じ話をしているなあとも思っていたので、ここいらで一度まとめておこうかなと。
というわけで、今日からは回答の変わりにこの記事のリンクが送られてくると思います。言い換えれば、この記事がちゃんとした回答になるように、今知っていること、感じていることを素直に書きます。
僕が最近水中ではD850しか使っていないので、いつも通りNikonのフルサイズベースで書きますが、CanonでもSONYでも考え方は同じです。
ちなみに、前にも似たようなことを書いたような記憶もあるのですが、基本的に記事は見返さないので、まあ内容がかぶっていても怒らないでください。
では、早速内容に入っていきましょう。今日はできるだけ短く簡潔に書きます。
■フィッシュアイ
(AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED など)
D850 AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED f8 1/500 ISO1400
大本命はフィッシュアイでしょう。
水面が丸くなるのが嫌だ?光芒が曲がるのが嫌い?
うんうん、わかりますよ。僕もそう思って、これまでフィッシュアイ以外のレンズもいくつか試してきました。
でもね、シーズン中に数回訪れるビッグチャンスに対応できるのは、やはりフィッシュアイだけなんです。
ビッグチャンスというのは、クジラが僕たちにめちゃくちゃ寄ってきてくれた時ですね。
こういう時は、フィッシュアイ以外のレンズだと、たいてい画角にクジラが入りきりません。特に、2頭以上いた場合には、より入りきらなくなります。
そんな時には、「こっちのクジラだけ撮ろう」とか「クジラの上半身?だけ撮ろう」とか、そういう選択を迫られるわけですが、「全部写したい!」というのが人間の性ですし、本音だと思います。
フィッシュアイには、あまり語られることがないような気もしますが、もう一つ大きなメリットがあります。
それは、被写界深度が深く、四隅の描写も比較的流れにくいということです。もちろんポートとの相性なんかによっても変わってきますが、他のレンズとは明らかに違います。
クジラの撮影には、ライトやストロボは使えません。自然光で撮影することになります。しかも、クジラは基本的に僕たちよりも下にいるので、下向きに撮影することが多くなりがちです。
つまり、暗いんです。晴れてればまだいいですが、曇りや雨だと光が圧倒的に足りない状況で撮影することになります。
何も考えずに撮ったらただの暗い写真になってしまうので、カメラの設定を工夫する必要があります(撮影データは作例を見てね)。
まず、シャッタスピード(SS)が遅いとぶれてしまうので、それなりに速くせざるをえません。
一方、絞り(F値)は本来ある程度絞った方が被写界深度も取れるし四隅の描写もよくなりますが…これが、フィッシュアイならそんなに絞らなくてもまあまあ撮れるわけです。f5.6~f8くらいを、僕は最近よく使います。
そんなに絞り込まなくてもまあまあいい感じの描写をえられるということは、ISO感度を上げなくて済むということなんですね。
クジラの撮影は、常にISO感度との闘いでもあります。特に天気の悪い日に適正露出で撮ろうとすると、ISO6400を超えることもざらです。
僕自身は、「近くで撮影できそうな時にフィッシュアイを選択する」ということももちろんあるのですが、「天気が悪いからフィッシュアイにする」という消去法的な選択も意外と多いかもしれません。
■超広角ズーム
(AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED など)
D850 AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED f11 1/500 ISO1100
フィッシュアイではなく、14-24mmや16-35mmなどの超広角ズームでクジラを撮っている方も多いと思います。僕も14-24mmは結構使いますし、好きです。
何と言っても、ファインダーをのぞいた時にドキドキ感が違います(伝わらないかもしれないけど)。
超広角ズームのいいところは、何といってもズームできるってことですよね。クジラが遠かったら望遠側で、近かったら広角側で、ということができます。
フィッシュアイだと、「米粒大にしか写りませんでした」ということがよくあるので、その点こちらの方が汎用性があります。
水面や光芒が真っすぐ写るのもいいですよね。僕もその点が気に入っていて、14-24㎜は晴れた日に選択することが多いです。
多少クジラから遠くても、雰囲気のある、静かな画作りができるように感じています。
デメリットは、ポートとの相性もありますが、被写界深度が浅くなりがちで、四隅も流れやすいという点でしょうか。
なので、どうしてもフィッシュアイよりは絞り込む必要があります(気にならなければ絞らなくてもいいけど)。
そしていくら絞っても、四隅までクジラが入っているとビヨンと伸びたような、ちょっと違和感のある描写になります。
僕が14-24mmを使っている感覚では、f8だと描写が甘めに感じることが多いので、できればf11くらいまで絞りたいなという感じでしょうか。でも、絞れば絞るほどISO感度が上がり、高感度ノイズが乗って写真がクリアじゃなくなるという。
なので個人的には、天気の悪い日には選択しづらい部分もあります。
僕にとって超広角ズームは、晴れた日に、ちょっと遠くからクジラを観察するような場面で選択したくなるレンズですね。
■広角単焦点(超広角ではない)
D850 AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED f8 1/640 ISO1000
最近、単焦点もいいなあと思い始めています。昨シーズンから35㎜を使い始めて、今年は28mmも導入しました。
先に僕の個人的な意見を伝えておきますが、クジラの水中撮影において単焦点レンズというのは、最初の1本目に買うべきレンズだとは思っていません。
特に意図がなければ、フィッシュアイか超広角ズームを選んだ方が無難だと思います。
逆に、「人と違う写真を撮りたい」とか、「単焦点への憧れがある」という方は、いきなり単焦点を選んでもいいでしょう。
一般的に、単焦点レンズはズームレンズに比べて画質がいいと言われています。
最近はズームレンズも画質がいいので差はそれほど感じないでしょうが、単焦点ならではの写りとか雰囲気というのは確かにあります。
そして、画角が制限されている分、「この画角の中でどう表現しようか」ということを撮影者自身が考えて撮る必要があります。正直、その場にいた人が全員フィッシュアイだと、みんな同じような写真だねということになりやすいのですが、単焦点はそうはなりませんね。
ここが単焦点の面白いところだと思います。「ただクジラを写している」というところから、「自分で考えてクジラのいる風景を作品に昇華させる」というステージにいける、ような気もします。
いけるかどうかは人それぞれですが。笑
SIGMAの14㎜等の超広角は別として、20㎜~35㎜の単焦点なら画角が広すぎない分、四隅の流れもあまり気になりません。その点も、メリットと言えますね。あと、安くて軽くて小さい。これもメリットか。
被写界深度と絞りの関係などは何mmを選ぶかによっても変わってきますが、基本的には超広角ズームと同じようなイメージでいいのかなと。
デメリットは、「クジラが近かったら全身は写らない」ということにつきますね。
20㎜~35㎜の単焦点について、分けて考えてみましょう。
- 20㎜、24㎜
(AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED AF-S NIKKOR 24mm f/1.8G ED など)
普通にクジラを撮ろうと思ったら、20㎜か24㎜がいいと思います。
これより画角が狭いと、「まあまあ近いかな」くらいの状況でも、クジラの体の一部がフレームアウトします。
ちなみに、僕はどちらも持っていません。なぜかというと、14-24mmと画角がかぶっているからです。
(下の写真は単焦点ではなく、14-24㎜の望遠端24㎜で撮っています。)
D850 AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED f8 1/500 ISO560
寄り切れなくてもそれなりにクジラが大きく写るし、多少近くてもギリギリ全身が写るし、ある意味ちょうどいい焦点距離(画角)だと思いますよ。
めっちゃ近かった時には、全身を写すことを諦める潔さは必要ですが。
- 28mm
(AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G など)
D850 AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G f8 1/640 ISO2500
まだ1日しか使ってないので、完璧にファーストインプレッションなのですが、「なんか中途半端だな」という印象です。
35㎜ほどの切り取り感はないし、空間を写すには画角が狭すぎる。なんで買ったんだろう?と思いました。笑
なんで買ったかというと、「35㎜が思いのほかよかった」と「20㎜も24㎜も焦点距離が14-24mmとかぶる」が理由です。もう少し使ってみますね。
基本的には、皆さんには積極的にはお勧めしません。
- 35㎜
(AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED など)
D850 AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED f8 1/800 ISO900
昨シーズン導入して、たまに使っていました。
使っているときは「やっぱり難しいな」と思っていたのですが、後から振り返って写真を見てみると「いいじゃん」と思うカットも結構あったので、今年も使うと思います。
難しさの原因は2つあります。
ひとつは、画角の狭さですね。個人的には、クジラの全身を撮るためのレンズではないと思っています。クジラの一部を切り取って、超広角ズームやフィッシュアイとは全く違った画作りをするという気概がないと、なかなか使えないレンズです。
それがこのレンズの面白さでもあるとは思うのですが。
もうひとつは、被写界深度の浅さです。
焦点距離が伸びれば伸びるほど被写界深度は浅くなるので、14㎜よりも20㎜の方が浅いし、20㎜よりも35㎜の方が浅いです。つまり、被写界深度を確保しようとすると、絞り込む必要があります。
先述の通り絞ったらその分だけISO感度を上げることになるので、これは不利と言っていいでしょう。ただ、これも逆の発想で、絞り込まずに被写界深度の浅さを生かした画作りをしてもいいのかもしれません。これは、今シーズンやってみたいなと思っていることです。
それから、画角が狭いということは、ぶれやすいということでもあります。
完璧に被写体を止めてきりっとした画にするためにはSSを上げざるをえないので、その点も35㎜のデメリットと言えるでしょう。
難しさはあるけど、頑張りがい(工夫しがい?)があるレンズですね。
D850 AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED f8 1/640 ISO1100
今日は、クジラの水中撮影で使えるレンズについて、それぞれの特徴を解説してみました。
いつもこれくらいシンプルに書けるといいんですけどね。
ちなみに、僕が使ったことがないのでここでは触れませんでしたが、もっと焦点距離の長いレンズを使ったっていいんですよ。50㎜とか85㎜とか135㎜とか。
詳しくは書きませんが、実際に使っている方のお話を伺って、「なるほど、そういう撮り方もあるのか」と、とても勉強になりました。
それでは、今シーズンも皆さんのクジラの写真が見られることを楽しみにしています。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
少しでも参考になれば嬉しいです!
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