美しい背景の水中写真を撮るために ~色を探す旅に出よう~

 

こんにちは、上出です。

先日「ボケ」に関する記事を書かせていただきました。

参照①:水中写真の絞りとボケをコントロールする ~ワイドはカリッと、マクロはフワッと~

参照②:ボケを制し、水中マクロを制す ~人はそれをメルヘンと呼ぶ、らしい~

①では「絞り」と「ボケ」の基本的な関係を、
②では「ボケ」に関する応用編を解説していますので、

もしまだご覧になっていない方は先に読んでみて下さい。

 

さて、今日は水中写真の「背景」について考えていきます。

この話ができるだけスッと頭に入るように、
そして内容をすぐに実践していただけるように、

テクニカルな部分を先に解説したのが
参照①と参照②の記事というわけですね。

 

色んなところでお話していますが、

珍しい生物を見つけて撮ってやろう

という気持ちは僕にはありません。

 

たくさんいる普通種でも、
顔が可愛かったり体色が綺麗な生物、

あるいは、

生物そのものは地味でも、
美しい環境にいる個体

を撮影したいと思っています。

 

では「美しい環境」とは何でしょうか?

色々ありますよね。

鮮やかな色のカイメンだったり…


①(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f11 1/160秒 ISO250)

 

②お花畑のようなソフトコーラルだったり…


②(D7000 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f5.6 1/200秒 ISO400)

宝石を散りばめたようなサンゴだったり…


③(D7000 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f5.6 1/250秒 ISO100)

これらの写真は、
サンゴやカイメンといった美しい環境に
生き物が直接乗っているので、

わかりやすいですよね。

ザ・フォトジェニックです。

皆さんもこういった光景に出会えば
自然とカメラを向けると思いますので、

僕もここであーだこーだ言いません。

ひとつだけアドバイスをさせていただくなら、

こういうケースでは

ある程度絞って周辺環境まで描写する

という選択肢を持っている幅が広がります。

もちろん開放気味で、
例えば②の写真のようにそれこそ夢に出てくる
お花畑のようにふんわり撮っても良いんですが、

③の写真なんかはf8くらいまでは絞って良かったな、
と今さらながら思います(撮影したのは3年前で…)。

 

で、いつもの事ながら前置きが長くなりましたが…

ここからが本題です。笑

 

いつもいつも、
魚たちが綺麗な環境の中にいてくれるわけではありません。

でも、僕たちは「作品」としての水中写真を撮るために、
貴重な時間とお金を使って海に潜り続けています。

「今日も被写体が良いところにいてくれなかったなあ…」

で終わってしまっては、ちょっと悲しいです。

 

ですのでここからは、

ザ・フォトジェニックな状況でなくても
綺麗な背景の作品を撮るための考え方

についてお話ししていこうと思います。

 

そう、今日は「背景」の話です。

 


(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f5.6 1/200秒 ISO160)

 

綺麗な環境にいなくたって、
背景の抜き方さえ工夫すれば面白い作品は撮れます。
(このホシゾラウミウシは錆びた鉄の棒に乗っていました…)

背景については色々な議論もされているでしょうし、
例えばウミシダを背景にして玉ボケを作ると綺麗
といったような話も良く聞きますし事実ですが、

ここではシンプルに、
「背景」を「色」という観点から考えていきます。

 

①水中で色を探す

一般的には、

ダイバーが水中で被写体を探している時でも、
ガイドがゲストに紹介する対象を探している時でも、

「何か可愛いor綺麗なor珍しい生き物はいないかなー」

という発想になりますよね。

この視点は当然必要ですが、
もうひとつ視点を増やすとなお良いと思います。

それは、

「背景に入れたら綺麗な色が、どこかにないだろうか?」

という視点です。

この視点を持ちながら潜っていると、
自然と赤や紫のカイメンや黄色いサンゴの仲間など、

水中を彩る様々な背景候補たちが目に飛び込んできます。

そして、その近くに何か生物がいればラッキーです。

 

つまり、
生き物を先に見つけるんではなくて、
背景を先に探すんですね。

 

被写体が綺麗なサンゴの上に直接乗っていなくても、
カメラを構える場所と角度を工夫すれば、
作品が一気に華やかになります。

そして、背景となるサンゴやカイメンを
純粋に「背景色」としてとらえた時には、
それらのディテールを描写する必要はありません。

むしろ、被写体を引き立てるために、
綺麗にボケてくれた方が良い場合が多いです。

ですので、例えば下の写真では、

絞りを開放寄りに設定して、
最短撮影距離付近まで被写体に近づいて

できるだけ背景がとろけるように工夫しています。


(D7000 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f4.0 1/250秒 ISO100)

 

②背景の色を決める

まあまあそうは言っても、
いくらきれいな背景候補を見つけたからって、
いつも近くに生き物がいるわけではありません。

それはしょうがないことです。

いさぎよく諦めましょう。笑

 

では、特に背景の事は考えずに、
グッと惹かれる被写体を見つけたとします。

おそらく僕のブログを読んで下さっている皆様は、

「どうやって撮影したら被写体の魅力を最大限表現できるだろうか?」

と、あれこれ想いを巡らせるのではないでしょうか。

その姿勢、素晴らしいです。

 

そして、この時同時に

「背景をどんな色で抜くか」

についても考える癖がつくと、
作品が一気に華やかで洗練された印象になります。

 

背景の色をコントロールする上で、
最も大切な要素は、

どこを(何を)背景にもってくるか

です。

 

海の青を背景にするのか…
岩影の黒を背景にするのか…
カイメンの赤を背景にするのか…

自分のカメラの位置や角度を変えながら、
あるいは生き物が動くタイミングを待ちながら、
思い通りの背景になるように
できる限りの工夫と忍耐をする必要があります。

つまり、ここでも色を探すわけです。

もちろん、生物のいる場所によっては
背景をほぼ変えられないこともありますが、

よく観察すれば、
意外と近くに思わぬ色彩あったります。

特にマクロ撮影の場合は、
それこそカメラの位置や角度が3mm動くだけで、
背景の写り込み方が全く変わります。

これは特に、一眼レフで
マクロレンズを使っている場合は顕著です。

例えば…

「とりあえず2匹とも入るようにフレーミングしよう」


(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f9 1/160秒 ISO250)

「あれ、何だか近くの岩に黄緑の海藻みたいのが生えてるぞ…」


(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f6.3 1/200秒 ISO250)

 

「ん?隣のカイメンにホヤもついてるぞ!」


(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f6.3 1/200秒 ISO250)

 

ちゃんと覚えてないので
海藻とかホヤとかは適当ですが、

生物の周辺環境をよく観察して、
カメラをちょっと動かすだけで背景が大きく変わります。

 

あるいは、
泳ぎ回る生物の場合は…

「とりあえず目にピントを合わせて1枚押さえよう!」


(D7000 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f5.6 1/250秒 ISO100)

 

「お、あそこのカイメンを背景にいれられたら面白いかも!」


(D7000 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f4.2 1/250秒 ISO100)

 

といった感じで、
撮りながら色々試してみるのがお勧めです。

正直、撮ってみないと
わからない部分も大きいですからね。

イメージがわかない時は1.2枚撮ってみてから考える

というスタンスで良いと思います。

 

ちなみに、
どうにも良い感じの色が見つからない時も、
もちろんあります。

そんな時は、
思い切って絞り開放付近で最短撮影距離まで寄って、
背景を全てボカしてあげても良いです。

これだけで、ごちゃごちゃした背景を
ある程度すっきりさせることができます。


(D750 + AF-S VR Micro-Nikkor 105mm  f4.0 1/60秒 ISO160)

 

 

今日はここまで、

・ザ・フォトジェニックな環境でなくても工夫と忍耐で美しい背景の作品は撮れる

・背景となる色を先に見つけるという視点も重要

・被写体を見つけた後も周辺の色を探し続け、撮影しながらどの色を背景にするのか決める

と言うお話をさせていただきました。

 

実は、ここでは伝えきれなかった
背景にまつわる話がまだまだありますので、
また別の機会に紹介できればと思います。

それでは、今日もここまで
読んで下さりありがとうございました!

少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

 

(更新:2017.5.10)

 

 

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