御蔵島イルカ撮影からの学び ~とんかつ「まるや」と水中写真家「越智隆治」さん~

 

こんにちは、上出です。

今日は、

野生の生き物を自分らしく撮影するための第一歩とは何か?

について考えていきます。

僕はここ数年の間、年に一度御蔵島でイルカを撮影するのがライフワークになっているのですが、
昨年は例年以上にたくさんの学びを得ることができました。

もちろん、御蔵島で実際にイルカを撮りながら学んだ事も多いのですが、
実は僕にとって大きな気づきを与えてくれたのは、

御蔵島に向かう船に乗る前にたまたま立ち寄った、竹芝桟橋近くにある「とんかつ まるや」さんです。

image1-4

 

僕は撮影機材を詰め込んだ大きなカバンを2つ持ってお店に入ったのですが、
入るとすぐに、年配の女性スタッフが、僕をカウンターではなく角のテーブル席に通してくれました。

おかげで僕は大きな荷物を気にせず
ゆっくりビールを飲みながら夕飯を食べることができましたし、

よくお客さんを見ているなあ、と関心したんですね。

他のスタッフの方はどうなのかな?
と思いキョロキョロ周囲を見回していると、
中年の男性スタッフは、
子供がお箸を落としたことにすかさず気づいたかと思えば、
他のお客さんが席を立つ瞬間には「ありがとうございます」と声を掛けています。

そう、このお店のスタッフの方々は
とにかくお客さんのことをよく観察していたのです。

しかもスタッフの皆さん、
接客していないただ立っている時も
物凄い笑顔です。笑

たぶんこの方たちはサービスや人が好きで、
自分たちのお店の事も好きなんだろうな、
と思いました。

だからお客さんの事を自分なりに良く観察して、
それぞれのお客さんに合ったサービスをすることで、
良い空間を作ろうとしてるんだろうな、と。

で、僕は思ったんです。

イルカの撮影も同じだよな、と。

イルカのことが好きでその可愛さ、強さ、美しさを自分の写真で誰かに伝えたいなら、

まずはイルカをよく観察し
自分なりに共感・理解し
お互いにとってストレスない空間を作る。

これこそが、
イルカの写真を自分らしく撮るための第一歩となることに、
あらためて気づかされました。

もしあの女性スタッフが、
1人のお客さんはテーブルじゃ落ち着かないからカウンター席に通してあげよう

という画一的な考え方だったとしたら、それが好意であったとしてもそこに感動は生まれません。

つまり、
自分の世界観ありきで押し付けても、
そこには何も生まれないんですね。

「こんな写真を撮りたい」と思って
色々イメージするのは大切なプロセスです。

でも、無理やりそこにはめこもうとしても、
人の心を動かすような写真は撮れません。

もちろん、相手のことを、
しかも水中の生き物の事を完全に理解はできませんが、

自分なりに解釈して、寄り添って、良いものを作ろうという気持ちが
その写真を見た人に何かしらのストーリーを感じさせるんじゃないかと思っています。

 

そんな事を船の中で色々と考えながら御蔵島に向かったのですが、
今年は初めて「宿まるい」さんを利用しました。
「まるや」さんのとんかつに満足した僕を、
翌朝「まるい」さんの船長さんが迎えに来て下さったので、
僕は一人でニヤニヤしていました。笑

それはいいとして、まるいさんのドルフィンスイム船では、水中写真家の越智隆治さんと一緒でした。

越智さんと言えば、僕もとても尊敬している水中写真家で、海棲哺乳類の写真を撮らせたら日本一だと思います。

とても気さくな方で、イルカの撮影に45°ビューファインダーなんていらないよ。
なんでそんなのつけてるの?

と、歯に衣着せない物言いで貴重なアドバイスも頂いたのですが(笑)、

最も印象的だったのは、実際目にした、
越智さんのイルカに対するアプローチの仕方です。

とんかつ屋のスタッフの方と
比べるべきなのかはわかりませんが、

越智さんも、イルカの個性や動きをよく観察していました。

そして越智さんが、
ここだ!というタイミングで潜っていくと、

まるでイルカと打ち合わせをしていたかのように
スーっとお互いが近づいていくのです。

これまで越智さんの作品を目にする機会は何度もあり、
どうしたらこんなに優しくて力強い写真が撮れるんだろうか
と考えていましたが、
その光景を見て僕は妙に納得してしまったんですね。

後からそのあたりの事をご本人に伺ってみたのですが、
イルカをよく見て動きを予想し、
その状況の中で自分がどこまで行けるのかを計算し、
どう仕上げたいのか考えながらアプローチしている

という趣旨のお話をして下さいました。

僕は、イルカを撮る上で本質的なキーワードが
この中にいくつも含まれているように感じたのですが、

でもこれって考えてみれば、
イルカに限った話ではないですよね。

水中で小さなハゼを撮る時だって同じですし、
サバンナでジャッカルを撮影するときも同じはずです。

dsc_3865-12
(ジャッカルの写真はありません。笑)

 

おそらく、野生生物の写真を撮って
誰かに何かを感じてもらうためには、
こういった事をひとつひとつ丁寧に
実践する必要があるんだと思います。

 

今日は、
野生の生き物を自分らしく撮影するために
考えるべき事、やるべき事は山ほどあるけど、

まずは被写体をよく観察して自分なりに理解することが大切
というお話をさせて頂きました。

 

少しでも皆さんの参考になれば嬉しく思います。
今日もここまでご覧いただきありがとうございました!

 

(更新:2017.2.20)

 

 

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2 Responses

  • 初めまして。

    この記事を読ませていただきました。
    ホントにその通りだと思います。

    私も御蔵島に通い始め、今シーズンで10年目に
    なります。
    どんどんカメラの性能が良くなっているのと
    反比例して、自分の体力は悲しいかな、
    落ちてきています。
    素潜りでの撮影も体力との闘いと思っていました。

    でも、本当に大切なのはイルカを愛する心と
    彼らを理解することなんですよね。

    今年もシーズンが始まりました。
    感謝と尊敬の気持ちを持って出掛けたいと
    思っています。

    • はじめまして。
      コメントをいただきありがとうございます。

      江口さんは、もう10年も御蔵島に通ってらっしゃるのですね。
      おっしゃる通りで、体力勝負の側面があるのは事実だと思います。

      僕自身も、撮影チャンスを増やせるように
      素潜りの技術と体力を鍛えながら、

      感謝の気持ち、寄り添う気持ちを持って、
      今年もイルカの撮影に臨むつもりです。

      いつか御蔵島でお会いできたら良いですね!

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