こんにちは、上出です。
先ほど宮古島から帰ってきました。
今日は、この度審査員として関わらせていただいた宮古島フォトコンテスト2022について書いてみようかと思います。
なんでこの記事を書こうと思ったかというと、
・受賞作品一つひとつの講評はしたけど、総評はしてなかった。
・フォトコンの様子をレポートする記事が他になさそう(残しておいた方が良さそう)。
ということに気づいたからです。
→2022.12.2追記
失礼いたしました。マリンダイビングでレポート記事を上げていただきました!
Marine Diving Web 宮古島フォトコンテスト2022表彰式&上出俊作トークショー開催
なので、前半では審査にあたって考えていたことと総評を。
後半では表彰式や滞在時のことなどを紹介できればと。
まず前提として、宮古島フォトコンの審査員は毎年1人なので、僕だけです。
これまで、水中写真家の大先輩方が審査員を務められてきました。
僕にお声がかかるとは思っていなかったので、お話をいただいた時はビックリしました。
もちろん、とても嬉しかったです。
ああ、自分はこんな仕事を任せてもらえるようになったのかと、感慨深くもありました。
縁をつないでくださった皆さん、いつも応援してくださっている皆さん、どうもありがとうございます。
当たり前ですが、この仕事を本気でやろうと思いました。
そして、どうすればこのフォトコンが宮古島と参加者にとってより意義深いものになるのか、自分なりに考えました。
というわけで、いきなりですが総評です。
まずは一般部門のグランプリと準グランプリの作品をご覧ください。
●グランプリ
齋藤利奈さん 「時の重なり」
●準グランプリ
藤田貴美子さん 「Secret garden」
それぞれの作品の講評は、宮古島フォトコンテストのHPをご覧ください↓
■総評
まず、どんな思いで審査に臨んだのかを書かせてください。
「参加者」と「宮古島」、そのどちらもにプラスになればいいなと思い、色々考えていました。
フォトコンはひとつのお祭りですし、審査結果に一喜一憂するのもいいのですが、せっかくなら応募してくださった方にとって学びがあるようにしたいと思っていました。
僕が言うのもおこがましいのですが、水中写真を撮るということについてあらためて考える機会になったらいいなと。
今の時代、どこで何が見られるとか、どの時期がいいとか、そういう情報はSNSでいくらでも知ることができます。
撮影機材はどんどん進化し、カメラが勝手にピントを合わせてくれる時代になりました。
はっきり言って、自分でちゃんと調べて学んで、それなりにお金をかければ、誰でもいい写真は撮れます。
そんな時代に、写真で人の心を動かすためには(そんなことができるとするなら)、何が必要なのでしょうか?
結局のところ大切なのは、「どうしても自分はそれを撮りたい」という、内側から湧き上がってくる衝動なんだと思います。
理由は説明できないけれど、なぜだかそれを撮らざるを得ないような感情。
ただガイドさんに紹介されたからとか、ただ写真映えするからとか、そういうことではなくて。
(もちろんガイドさんの力を借りるのは全然いいことだと思いますが。)
そういう内的な動機から被写体と向き合えば、自然と自分自身の視点が現れるはずです。
「あなたは世界をどう見ているんですか?」ということが撮影者に問われている時代だと、僕は思います。
その世界観を写真表現に落とし込む技術と知識も、言うまでもなく必要です。
抽象的な話になってしまいましたが、宮古島フォトコンテスト2022では、撮影者の「内なる衝動」や「視点」を意識しながら審査をさせていただきました。
技術は大事ですが、一番ではありません。
その前にあるはずの、「なぜそれを撮ったのか」「それをどう見たのか」に焦点を当てて審査をしました。
そういう思いがあったから、フォトコンHPの審査員からのメッセージにも「被写体は何でも構いません。あなたにとっての宮古島を表現してください。」というようなコメントを書きました。
それが結果的に、宮古島にとってもプラスになるのかもしれないと思ったからです。
宮古島のダイビングと言えば、洞窟やクレバスなどの地形が有名です。
一般的なレジャーダイビングの範疇で言えば、宮古島の地形ポイントは数も質も日本一と言っていいでしょう。
でも、当然宮古島にも美しいサンゴ礁は広がっているし、小さな生き物たちもたくさん住んでいます。
そういった被写体に光が当たることで、これまで宮古島を訪れていなかったダイバーが来てくれるようになったらいいなと思いました。
そんな思いも込めて、審査員特別部門(青のない水中写真)として「陽だまり賞」も設けていただきました。
さて、結果的にどうだったかと言うと。
「ただ撮った」ような写真はあまりなくて、「自分の視点」で撮られた作品がたくさんありました。
これは素直に、嬉しかったです。別に僕がああだこうだ言う必要はないのかもなと、素直に思いました。
特に入賞した作品は、撮影者の視点と、それを写真に落とし込む技術の裏付けもありました。
一般部門のグランプリ・準グランプリと陽だまり賞に関しては、なかなか真似できなさそうな作品ですよね。
技術的なところで言うと、あともう一歩という作品も多かったように感じました。
基本的なところはおさえられているんだけど、ちょっと詰めが甘いとでもいうのでしょうか。偉そうですが。
作品としての洗練度が全体的に上がってくると、フォトコンとしてはより盛り上がるのかなという印象です。
良くも悪くも、入賞作品を選ぶのにそれほど迷いませんでした(特に上位は)。
被写体は、意外と地形が少なかったですね。
審査員に気を使ったのかもしれませんが…正直、直球勝負の地形の作品はもう少し見てみたかったです。
一方で、地形とかサンゴとか、そういう枠にとらわれないようなワイド写真が多くて、刺激的でした。
結果的に、そういう作品も多く入賞していますね。まさに、撮影者の視点が現れていました。
どの部門でも、小さな生き物の写真は少なかったです。
予想はしていましたが、もう少しマクロ写真が増えてくると、個人的には楽しいですね。
水中マクロ撮影の文化を醸成していくことが、結果的にフォト派ダイバーの呼び込みにつながるようにも感じています。
そして、フォト派ダイバーはSNSなどで勝手に島やお店の宣伝をしてくれるので、やっぱり大事なのかなと。
マクロとワイド、本質的には分ける必要がないのかもしれませんが、宮古島でもマクロの作品がどんどん生まれるようになるといいですね。
僕もそのお手伝いが出来たらいいなと思っています。
だいぶ長くなってしまいましたが、審査にあたって考えていたことと、審査を終えて感じたことを書いてみました。
以上が宮古島2022の総評です。
●陽だまり賞
藤田貴美子さん 「焔」
■表彰式などなど
さて、ここからは表彰式の様子と滞在中の話を。
すでに長くなってしまっているので、表彰式の様子は写真を中心に。
選考は事前に終わっていたので、表彰式&パーティーでのトークショーが、宮古滞在中の一番の仕事でした。
何回やっても慣れないトークショーのことで頭がいっぱいだったのですが、意外と緊張したのが表彰式。
考えてみたら、表彰状を人に渡すなんて、生まれて初めての経験です。
受賞者の方々の笑顔を見て、そして喜びのコメントを聞いて、審査員という仕事がどういうものなのか、少しだけわかった気がしました。
現地では一週間、フォトコン協賛企業のホテル・デ・ラクアさんに滞在していました。
まず、お部屋が綺麗で広くてちょっとびっくりしました。街に歩いて出られる場所ですが、喧噪からは離れていて、立地も良かったです。
朝食は美味しいし、器材洗い場もあるし、スタッフは皆さん感じがいいし、本当に快適なお宿でした。
協賛企業さんだからここに書いているというのは確かにありますが、それを差し引いても、素直にまた泊まりたいと思える宿です。
表彰式の前後は、フォトコン参加店を利用して潜らせていただきました。
あまり普段ショップさんの紹介はしませんが、せっかくなのでちょっとだけ。
いちいち書きませんが、どのショップの方もみんないい人で、気持ちよく過ごせました。
とにかくランチが美味しい!で有名なお店ですね。
別に疑っていたわけではありませんが、本当においしかったです。
今日のお昼は何かなーと、朝から考えてしまいます。
オーナーは人の多いポイントがあまり好きではないそうで、できるだけ混んでいないポイントを選んで潜ります。
なので、下地伊良部エリアだけでなく、八重干瀬や宮古島南岸、時には島の東側にも積極的に行くそうです。
滞在中、初めて宮古島の南側のポイントを潜らせてもらいました。
島の東側にも面白いポイントがたくさんあるそうで、今度また連れて行って欲しいなと思っています。
もう4年くらいお世話になっているお店です。
宮古の中では数少ない、マクロ撮影のリクエストに応えてくれるショップですね。
今回潜ったのは1日だけでしたが、しっかり得意の(僕がじゃなくてエミナマリンが)ウミウシを紹介していただきました。
もちろん普通に綺麗な魚などなども紹介してくれますが、リクエストすれば、見たことないようなヤドカリとか、生えモノとか、マニアックな世界も見せてくれるはずです。
マクロ専門ではないので、地形のリクエストにも応えてくれます。
オーナーもD850で水中撮影している方なので、フォト派の受け入れも慣れている印象です。
宮古島フォトコンの実行委員長を務められているお店です。
下地伊良部エリアだけでなく、八重干瀬に足を延ばすこともあるそう。
少人数制と言いつつ少人数じゃないよなと思ってしまうお店もありますが(僕の勝手な印象)、山本大司潜水案内さんは本当の少人数で出港しているそうです。
オーナーは、船の上で過ごす非日常感と、のんびりした時間を大事にしているとのことでした。
今回潜ったのは1日だけでしたが、1日の中で最大限お客さんが楽しめるように、そして僕が作品を残せるように、さりげなく配慮してくれていました。
他の船のチームと水中でバッティングしないように毎回エントリー時間を調整してくれたのが、写真家としてはありがたかったです。
だいぶ長くなってしまいました。ごめんなさい。
まだまだ書きたいことはあるのですが、これくらいにしておきます。
ちなみに、アイキャッチに使ったこの写真。なんだかわかりますか?
正解は、ウミキノコ(ソフトコーラル)のポリプでした。
一般部門の準グランプリの作品を真似して、表彰式の次の日に撮ってみました。笑
が、全然違う雰囲気になりましたね。
ポリプの色とか形が違うので、きっと違う種類のウミキノコなのでしょうが…
「同じものを撮ってもそれぞれの視点によって違う作品が生まれる」
ということで、強引にまとめてこの記事を終えたいと思います。
最後になりますが、この度フォトコンテストの審査員として僕を呼んでくださった皆さん。
作品を応募してくれた皆さん。そして現地でお世話になった皆さん。
どうもありがとうございました。これからも一緒に、宮古島を盛り上げていきましょう。
それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました。
少しでも参考になれば嬉しいです!