水中マクロ撮影時の絞り ~Nikonの実効F値に騙されるな~

 

こんにちは、上出です。

今日は、「水中マクロ撮影時の絞り ~Nikonの実効F値に騙されるな~」というテーマで解説していきます。

 

「上出さんのブログを見て、設定を真似して撮影してみたけど、同じようにはボケない…」

 

そんな経験がある方にとっては、この記事がひとつの回答になるかもしれません。

特に、100㎜クラスのマクロレンズを使っている方にとっては、参考になると思います。

D850 105mm Z-330  f5.6 1/250秒 ISO64

 

先日、以下のような趣旨の質問をいただきました(言い回しは変えています)。

 

上出さんのこれまでのマクロのお写真は、105mmの場合は、f5.6よりも絞りを開けているデータは見たことがないと思います。

ピントがビシッと合っているように見せるための、絞りの開放限界はどのあたりだとお考えでしょうか?

 

とっても深い質問です。

実際僕は、105㎜マクロで水中写真を撮る時、f5.6よりも絞りを開けることはほぼありません。

これは、質問者さんのご指摘の通りで、これまでのブログ記事を見返してもらえればわかります。

 

この質問に答えるうえで、避けては通れない話題があります。

それは、「実効F値」です。

 

実は、これまでこの実効F値については、あえて触れてきませんでした。

何故かというと、説明がめっちゃ大変だからです。

しかも、光学的な話が苦手な僕は、実効F値についておそらく70%も理解できていません。

 

そんなわけで、この記事でも実効F値の細かい説明は他のサイトに譲ります。笑

以下のHPが、難しすぎず、かと言って端折りすぎずで、良い感じかなと。

興味のある方はご自身でも色々調べてみてください。

ニコンのこだわり ~マイクロレンズと実効F値表示~

 

わざわざ他のサイトを見るのが面倒という方のために、僕がこれでもかというくらいはしょって実効F値について説明します。

光学的には正確じゃないですが、まあ、ざっくり理解するためということで。

 

・実効F値表示とは、Nikonのマクロレンズだけで採用されており、Canon・SONY・Olympusなどのメーカーでは採用されていない(これらのメーカーは公称F値表示)

・実効F値とは、「実際にどれだけの光を取り込めるか」がわかる表示

・公称F値とは、「実際の被写界深度(どれくらいボケるか)」がわかる表示

 

うーん、自分で書いてて、分かりにくいなあと思います。笑

とりあえずここでは、「Nikonだけ絞りの表示の仕方が違うのか!」ということがわかれば、最低限OKです。

 

実効F値どうこうの前に、絞りは「取り込む光の量」と「被写界深度」という、2つの要素をコントロールしているということはおさえておいてくださいね。

さあ、細かい事は気にせず、先に進みましょう。

 

マクロレンズは構造上、被写体に寄れば寄るほど光を取り込みにくくなります。

これは、どのメーカーのマクロレンズでも同じです。

 

例えば、開放F値がf2.8のマクロレンズを使うとします。

被写体から遠く離れたところで撮影するならf2.8の光をそのまま取り込めますが、被写体に寄っていくと、実際に取り込める光はf3.5とかf4.8とか、どんどん減っていきます。

これをそのまま表示したのがNikonの実効F値です。

つまりNikonの実効F値というのは、「今どれだけの光を取り込めるか」を表示しているので、「今の被写界深度はどれくらいか」についてはわかりません。

 

一方、自分でf2.8と設定したら、どれだけ寄っても表示はf2.8のままなのが公称F値。

取り込む光の量が減ったのは無視して表示しているわけです。

実効F値と逆で、「今の被写界深度はどれくらいか」を表示していて、「今どれだけの光を取り込めるか」はわからないということです。

 

つまり、水中マクロ撮影においては、

・実効F値表示だと、ストロボの光量調整(マニュアル)はしやすいが、被写界深度はコントロールしにくい

・公称F値表示だと、被写界深度はコントロールしやすいが、ストロボの光量調整(マニュアル)はしにくい

ということになるのかなと思います。

(もし間違っていたら、誰か教えてください。)

D850 105mm Z-330  f6.3 1/250秒 ISO64

 

さて、具体的な話に入っていきましょう。

ここまでの実効F値の話はほとんどわかっていなくても、ここから先は読んでください。

とりあえず、NikonD850AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDを使う前提で話を進めますね。

 

まず、マニュアルフォーカス(MF)で、ピントを最短撮影距離に合わせてみます。

で、絞りのダイヤルをコロコロコロコロ回しまくって、絞り開放にもっていきます。

 

するとあら不思議、105㎜マクロの開放F値はf2.8のはずなのに、カメラに表示されているF値はf4.8です。

これが実効F値ですね。

CanonやSONYのカメラで同じことをやれば、カメラにはf2.8と表示されるはずです。

 

さて、ここで最初の質問を思い出しましょう。

「上出さんの撮影データを見ると、f5.6よりも絞りを開けている写真がない」と書いてありました。

 

f5.6というのは、通常、f2.8から2段絞った状態です。

1段ずつ絞ると「f2.8→f4→f5.6」ですよね。

実際には1/3段表示にしている人が多いと思いますので、「f2.8→f3.2→f3.5→f4→f4.5→f5→f5.6」と、表示が変化すると思います。

 

でも、ここまで説明してきた通り、最短撮影距離だと実効F値表示の開放絞りはf4.8。

f4.8からf5.6にするためには、コロ・コロと2刻み絞りダイヤルを動かすだけです(1/3段表示の場合)。

どういうことかわかりますか?

 

Nikonで、最短撮影距離で撮影すると、f5.6って限りなく開放絞りに近い被写界深度なんです。

他のメーカーのf5.6だったら開放絞りから2段絞ったことになりますが、Nikonの場合は1/2段しか絞ってないのです。

 

※「f2.8→f3.2→f3.5→f4→f4.5→f5→f5.6」が1/3段表示。

「f2.8→f3.3→f4→f4.8→f5.6」が1/2段表示。

通常1/3段表示にf4.8という数字はないけど、最短撮影距離にピントを合わせた時だけf4.8が現れる。

 

めちゃくちゃ大事なのでもう一度言います。

 

Nikonのf5.6は開放から2段絞ってないんです。

むしろ、ほぼ開放の被写界深度で撮ってるんです。

D850 105mm Z-330  f5.6 1/250秒 ISO64

 

上出ができるだけ被写体に寄って撮影しているというのは、みんなの知るところ?です。

とは言え、毎回最短撮影距離まで寄っているかと言ったら、そんなことはありません。

現実的には、AFで完璧に最短撮影距離まで寄り切ることは難しいです。

なので実際には、「最短撮影距離に近いところ」で撮影していることが多いと思います。

 

最短撮影距離の開放F値はf4.8と表示されますが、被写体から離れるにつれ「f4.8→f4.2→f4→f3.8→f3.5→f3.3→f3.2→f3→f2.8」と変化していきます。

完璧な最短撮影距離まで寄れていないとすると、僕の場合はおそらく開放F値f4前後の距離で撮ってることが多いのではないかと…

仮にそうだとすると、f5.6というのは、開放から1段絞ったところです。

つまり、他のメーカーで言うところのf4です。

 

そうそう、僕の場合はおそらく…とかむにゃむにゃ言ってますが、ここもちょっとだけ大事なんです。

実際水中で撮影している時、レンズから被写体までの正確な距離なんてわかりません。

そもそも、距離が何㎝だと、実効F値の開放絞りの表示は○○になる、なんてデータも頭に入っていません。

 

自分が「この被写体はf5.6で撮ろう」と決めたとします。

でも、被写体との距離は自分で把握しきれないし、被写体も自分も動くので距離は常に変わります。

そのため、「カメラにはf5.6と表示されてるけど、今の開放絞りはいくつなんだろう?」ということがわかりません。

開放絞りがわからないということは、f5.6という実効F値表示が、実際に開放から何段絞った状態なのかわからないということです。

つまり、どれくらいボケるかわかりません。

 

ちなみに、その距離での開放F値を知る方法もあります。簡単です。

絞りダイヤルを開放側にコロコロ回せばいいだけです。

f4.8までしか開かなかったらそこが最短撮影距離だし、f4だったら最短撮影距離からはちょっとだけ離れてるということ…

ですが、そんなの面倒くさくてやってられないですよね。

僕もやりません。

 

つまり僕は(Nikonユーザーのあなたもおそらく)、今の絞りが公称F値で言うところのいくつなのかわからず撮っているのです。

世の中はどんどん便利になっていくのに、何なんでしょうね、この感覚は。普通に不便です。笑

D850 105mm Z-330  f7.1 1/250秒 ISO64

 

ここまで「f5.6」が基準のような書き方をしてしまいましたが、これは明確に意味のある数字ではありません。

でも確かに、僕はf5.6よりも絞りを開けることはほぼないんですよね。

おそらく、クローズアップレンズを使わない時の105㎜マクロでの撮影では、90%以上がf5.6からf8の間で撮影していると思います。

感覚的に、この辺のボケと解像感のバランスがちょうどいいんでしょう。

 

一般的に、レンズというのは絞り開放の描写は甘くなりがちです。

f8前後でレンズの性能が最大限発揮されるなんて話もよく聞くと思います。

同じような話で、開放よりも1段絞ると描写が安定する、なんてことも言われたりします(レンズによりますが)。

 

・105㎜という焦点距離は被写界深度が浅い

・上出は被写体に寄る傾向がある

・被写体に寄れば寄るほど被写界深度は浅くなる

 

→105㎜マクロで最短撮影距離付近まで寄って絞り開放で撮影すると、さすがに被写界深度が浅すぎてどこにピントが合ってるかわからない。

→かと言って絞り過ぎたらボケが生かせないし、開放から1段くらい絞っておくのがちょうどいいか。

 

こんな考えのもと、自分の中でのひとつの基準がf5.6になっているのだと思います。

 

D850 105mm Z-330  f5.6 1/250秒 ISO64

 

疲れたので無理やりまとめます。笑

 

  • 上出のf5.6は、Nikon以外のカメラを使ってる人にとってはf4前後に相当する。

 

結局今日言いたかったのはこれだけ?ですかね。

上出のf8はCanonのf5.6で、上出のf11はCanonのf8ということです(CanonでもSONYでもいいよ)。

Nikon以外のカメラで100㎜前後のマクロレンズを使っていて、僕の撮影データを参考にするなら、1段前後絞りを開けてみるといいのかなと。

 

まあ、数字はざっくりですし、「最短撮影距離付近で撮影する場合」という前提は忘れないでください。

 

ちなみに、Nikonユーザーの方でも、「上出と同じ設定にしても同じようにはボケない」と感じている方もいるかもしれません。

何故かというと、どれだけボケるか、どんな風にボケるかは、絞りだけで決まるわけではないからなんですね。

 

被写体、背景、前景、カメラ。

これらの距離をコントロールすることで、思い通りのボケを作ることができます。

もちろんこれは、CanonでもSONYでもOlympusでも一緒です。

まあ、その話はまたどこかでしましょう。

 

それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました。

少しでも参考になれば嬉しいです!

 

 

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