クジラの水中撮影に適したレンズとは~35mm/14-24mm/8-15mmの比較~

 

こんにちは、上出です。

今日は、クジラの水中撮影用のレンズについて考えてみたいと思います。

「これがベスト!」とかいう話ではないので、「僕はこんな風に使い分けてるよ」という感じですかね。

この記事で比較するのは、以下の3つのレンズです。

AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED
AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

せっかくなので、この記事では今シーズン(2021/1/1~3/31)の奄美大島・沖縄本島で撮影した写真のみを載せようかと思います。

できれば作例から色々感じてもらいたいので、今日は写真多め文章少なめにできればなと…

というわけで、気楽に読んでくださいませ。

D850  AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm  f7.1 1/500秒 ISO640

 

実際の比較に入る前に、今シーズンの振り返りをちょっとだけさせてください。

 

2021年は、奄美大島と沖縄本島でホエールスイムツアーを開催しました。

当然うまくいく日もいかない日もありましたが、参加者全員が水中でクジラを観察することができたので、成功裏に終えられたと言っていいと思います。

まあ、細かい話は会った時にでも聞いてください。

 

ツアーが成功ならオールOKかと言うと、そうでもないんですよね。

だって僕、写真家ですもの。

急にどうしたんだって感じですが。笑

 

今シーズンは、なんだかずっと悩みながら撮影してました。

厳密にいえば、水中で悩むことはあまりないのですが、陸で自分の写真を見ながら「これでいいのだろうか」と常に悩んでいました。

 

クジラって、水中でできるだけ近くに寄って撮影した方が迫力も質感も出ます。

(実際には自分で近寄るというより、クジラが近寄ってくれるのを待つんですが。)

僕も、なんだかんだ言いながら「できるだけ近くで撮影したい」とずっと思ってきましたし、今もそういう気持ちはあります。

他の方が撮影した写真を見ても、やっぱり寄ってる写真を見て「おー」と思います。

D850  AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm  f6.3 1/500秒 ISO1000

 

でも、去年くらいからこんな気持ちがムクムクと大きくなり始めていたんです。

「できるだけ近くに寄って、クジラの全身が切れないように画面いっぱいに入れることが、自分がやりたいクジラの表現なんだろうか?」と。

もちろんそれはそれでいいんですが、それだけじゃないよなあと今年は強く思うようになりました。

1シーズンで答えが出るような話じゃありませんし、今も悩んでいます。

 

きっと今シーズンの写真と今日の文章には、そんな僕の思いが多少なりとも反映されているはずです。

その辺も踏まえてこの後の記事を読んでもらえたら嬉しいような気もしますし、特に気にせずまっさらな気持ちで読んでもらった方がいいような気もします。笑

では、それぞれのレンズの特徴を紹介していきましょう。

 

■AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED

カメラ:D850
ハウジング:nauticam D850
ポート:Athena OPD-FZ200MF

f7.1 1/500秒 ISO900

 

クジラの水中撮影に1本しかレンズを持っていけないとしたら、僕は結局このフィッシュアイを選んでしまうと思います。

ちょっと語弊があるかもしれませんが、結局、フィッシュアイが一番楽なんです。

 

被写界深度が深いので、そんなに絞らなくてもある程度画面全体の解像感が得られる。

画角が広いので、シャッタースピードをそんなに上げなくてもぶれない。

 

この2つ、どういうことかというと、ISO感度を上げなくて済むということです。

晴れてる日にはそこまで気にしなくてもいいのかもしれませんが、お天気が悪い日はシビアです。

絞ってSSを上げたら、ISO感度が際限なく上がっていきます。

(ISOオートにして、ISOの上限をかけなかったら。上限かけたら暗くなるだけですが。)

自然光のみで撮影するというクジラ撮影の特性上、フィッシュアイは(結果的に)ISO感度を上げなくて済むというメリットがあります。

f8 1/500秒 ISO1400

 

フィッシュアイのもう一つのメリットは、シンプルに画角の広さです。

1シーズンザトウクジラを撮影していると、「フィッシュアイ以外のレンズだったら入りきらなかったな」というシチュエーションが何度かあります。

特に、クジラが複数頭いて全てを画角に収めようと思ったら、フィッシュアイが圧倒的に有利です。

f8 1/500秒 ISO1400

 

フィッシュアイに関しては、これくらいでいいでしょう。

特にデメリットとかはありません。

 

あるとしたら、

水面や光が曲がってしまう

みんな使ってるからみんなと同じような写真になる

というくらいでしょうか。

あと、クジラから遠かったら米粒大にしか写りません。

 

■AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

カメラ:D850
ハウジング:nauticam D850
ポート:Athena OPD-WZ200MF

f8 1/640秒 ISO1100

 

今年から、クジラの水中撮影に35㎜単焦点を使い始めました。

なんでこのレンズを買ったか、どんな使い方があるか、みたいな話を以前別の記事で書いたので、良かったらご覧ください。

35mm単焦点で「非日常感」のない水中写真を撮る

 

このレンズ、クジラの撮影においては覚悟を試されるレンズです。

だって、運よくクジラが寄って来てくれたら、クジラが画面からはみ出てしまいますから。

「はみ出てしまった」から「あえて一部を切り取った」という世界観に自分で持っていく必要があります。

f8 1/800秒 ISO900

 

ちなみに、元々35㎜ではクジラの正面のカットも撮ってみたいなと思っていました。

完璧に正面ってわけじゃないですが、イメージに近い写真は撮れて、これはこれで気に入っています。

f8 1/640秒 ISO1100

 

当然、画角が狭いので、ちょっと離れたところからでも透明度が良ければそれなりに撮れます。

個人的には、35㎜で撮る少し引いたカットもありだなと感じました。

周りに人が多くても、画角が狭くて人が写り込みづらいので、気持ち的にも楽です。

f8 1/800秒 ISO1800

 

万能なレンズとは言えませんが、35㎜は撮影しててけっこう楽しかったです。

ただ、毎日これ1本で海に出ろと言われたら、ちょっといじめられてるような気分になるかもしれません。

 

僕の場合は、D850のハウジングが2台あるので、ホエールスイムの時には

1台目:8-15mmフィッシュアイ

2台目:35㎜単焦点 or 14-24mm

という組み合わせで船上に用意しています。

遊び心をもって使うと良さそうなレンズですね。

f8 1/640秒 ISO1250

 

そうそう、デメリットもあります。

画角が狭いので、ぶれやすいです。

 

その分シャッタースピードを上げる必要がありますが、どれくらい上げればいいんでしょうねえ。

今年は数回しか使えなかったので、また来年色々試してみようと思います。

1/500秒だとけっこうぶれてたので、1/800秒~1/1000秒くらいまで上げた方が安心なのかもしれません。

 

■AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

カメラ:D850
ハウジング:nauticam D850
ポート:Athena OPD-WZ200MF

f8 1/500秒 ISO720

 

一番思い出が詰まっているレンズです。

僕は勝手に、このレンズと共に水中写真家人生を歩んできたと思っています。

と言いつつ、昨シーズンのクジラではほとんど使いませんでした。笑

 

このレンズの良いところは、何と言っても全てが真っすぐ写ることです。

本来水面も光も真っすぐなので、できれば真っすぐのまま写してあげたい。

そんな気持ちがあります。

f11 1/500秒 ISO900

 

じゃあなんで出番が少なくなりがちかというと、ドームポートとの相性やらなんやらで、レンズそのものの性能が水中では全然出ないんですよね。

画像の中心から離れれば離れるほど、描写が甘くなって、画面の中心しかピントが合ってないように見えたりします。

 

絞り込めばそれなりに解像するのでしょうが、f11まで絞ってやっと使えるくらいだなと今年も思いました。

絞れば絞るだけISO感度が上がるので、やはりそういう意味でフィッシュアイより不利です。

(と言いつつ、割り切って、ISO感度は上がってもいいよねと考えることもできるよなとも思います。)

ちなみに、この辺の話は使っているポートによって大きく変わってくるので、参考程度にとらえておいてください。

f11 1/500秒 ISO1400

 

「このレンズと共に歩んできた」とか言いながら、あんまりいい話をしていないので、ここから挽回します。

 

水中写真を撮っていて、撮り終えた後にカメラのモニターを確認してドキッとするのは、このレンズを使っている時だけです。

自分のイメージを超える写真がはじき出されたときのあのゾクゾク感は、他の何にも替えられません。

おそらく理由はいくつかあるのでしょうが、ひとつは青の出方ですね。

僕も普段からLightroomで海の青の色味は調整しますが、他のレンズで撮った青をどんなにいじっても、このレンズの青のようにはなりません。

f8 1/500秒 ISO560

 

14-24mmは、どちらかというと、派手で迫力のある写真ではなく、静かな作品を撮るのに適しているように感じています。

SNSに載せてもあんまりいいねはつかないかもしれないけど、大きく印刷して飾ればずっと見ていられる写真。

そんなイメージです。

 

結局今シーズンも数回しか使いませんでしたが、来年はもう一度積極的に使ってみようと思わせてくれました。

f11 1/500秒 ISO1100

 

今日は、クジラ撮影用のレンズとして、

AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED
AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

という3種類を比較してみました。

 

結局好みですし、どれがいいとか悪いとかいうことはありません。

僕のツアーでも、24㎜単焦点1本で来てる方なんかもいて、それはそれで潔くていいなあなんて思いました。

 

行けばそこにいる、という生き物でもないので、色々なレンズを試すのは簡単ではありません。

チャンス自体が少ないので、失敗したくないという気持ちもわかります。

でも、結局最後は自分で決めるしかないんですよね。

皆さんも、レンズ選びの時からクジラとの駆け引きを楽しんでみてください。

 

それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました!

少しでも参考になれば嬉しいです。

 

p.s.

2022年も奄美大島と沖縄本島でホエールスイムツアーを開催します。

日程などの詳細はこれから詰めますが、興味のある方は先に下記のフォームからご連絡ください。

詳細が決まり次第、直接ご案内させていただきます。

※今シーズンのツアーにご参加いただいた方は、個別にご連絡いただかなくても日程が決まり次第案内しますので、ご安心ください。

 

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