こんにちは、上出です。
沖縄本島、連日大雨です。
海が茶色すぎて、もはや液体にすら見えず、広大な干潟が沖の方まで続いているような、なんとも不思議な光景が広がっています。
とは言え、きっと明日には沖縄本島在住のみんなが「勝手に梅雨明け宣言」をするはず。
夏はもうすぐそこ。きっとあの雲の向こう側にいる。
というわけで、今日はサンゴの撮影シリーズの後編です。
をまだご覧になっていない方は、先に前編からお読みください。
では早速、後編の内容に入っていきましょう。
今日解説するのは、サンゴの水中写真を魅力的に撮るための「構図・アングル」についてです。
今回の話もできるだけ分けて考えましょう。
以下の3つに分けると、わかりやすそうです。
今日も水中写真初心者の方でも読めるように書きますので、ぜひ最後までついてきてください。
①あおりと俯瞰
②寄りと引き
③構図の調整
D850 35mm f8 1/400秒 ISO800 奄美大島
①あおりと俯瞰
まずは、カメラを構える高さの話です。
「あおる」というのは、下から見上げて撮ること。「俯瞰」というのは、上から見おろして撮ること。です。
水中写真って、陸上の写真と違って、自分が上下に動くことができます。
何を今さらって感じですが、これはめちゃくちゃに大事なことで、ここを意識してるかしてないかで作品の出来は大きく変わってきます。
もちろん、下からあおって撮るのか上から俯瞰で撮るのかは、その状況にもよりますし、表現したいことにもよりますし、「こういう時はあおらないといけない」とかいう話ではありません。
ただ、個人的には、水中写真はマクロでもワイドでも下からあおった方が背景の抜けが良くなるので、僕はしょっちゅう「もっと下からあおれー!」と言ってます(実際はもっと優しく言います)。
下の写真のようなイメージですね。
しかーし(前回からの口癖)。
自分のサンゴの写真を見返してみたところ、極端にあおった写真、つまりサンゴよりも下から撮った写真というのはありませんでした。
もちろん、サンゴはあおって撮っちゃダメというわけではありません。
単純に、好みの問題です。
おそらく僕の場合は、サンゴの色をしっかり出したいという思いが強いので、極端な逆光になる「あおり」を自然と避けていたんだと思います。
ストロボを使わずに完璧な逆光で撮影すると、いわゆるシルエット写真になるので。
それから単純に、サンゴを下から撮影できる環境が少ないというのもありますね。
それからそれから、僕にその発想がなかったという問題もあるような気がしてきました。
まあようは、作例がないってことです。ごめんなさい。
じゃあ、なんでもかんでも上から見おろして俯瞰で撮ってるのかというと、そういうわけでもありません。
サンゴに触るか触らないかくらいの高さまで、ギリギリまで水深を下げて撮影しているカットは結構あります。
たぶんこういうアングルで撮ることが一番多いですね。
D850 8-15mmFisheye f11 1/500秒 ISO1000 沖縄本島 国頭村
正直、僕自身は撮影中に俯瞰とかあおりとかいうことはあまり考えていません。
何故かというと、実際には、俯瞰とあおりの二択ではないからです。
サンゴすれすれの高さから水面まで、カメラを構える高さは自由に選べます。
高さを変えながら撮影して後で良い感じのカットを選んでもいいし、明確なイメージがあるならそれに合った高さを探せばいい。
比較的高い所から見おろして撮ったカットだと、こんな写真がありますね。
D850 14-24mm f13 1/200秒 ISO360 西表島
ちなみに、完璧に真下を向いて撮ることもできます。
普段はほとんどやらないのですが、前回も紹介したこのカットなんかは、ほぼ真下を向いて撮影しています。
D850 8-15mmFisheye Z-330 f11 1/250秒 ISO500 座間味島
カメラを構える高さによって写真の印象が大きく変わる。
ここで言いたいのはそういうことです。
上から見下ろして俯瞰で撮影することで、全体の広がりを表現しやすくなります。
その分、サンゴがスカスカだったらそれがそのまま写るので、ちょっと寂しい印象にもなりがちです。
その場の状況がそのまま写ると言ってもいいかもしれません。
D850 8-15mmFisheye f11 1/500秒 ISO1000 沖縄本島 国頭村
一方、下から撮影すると、手前のサンゴは大きく、奥のサンゴは小さく写るので、遠近感が強調されます。
迫力や力強さは出ますが、その場の状況を説明するのには向いていないとも言えますね。
言い方を変えれば、自分の見せたいところだけを見せられるということなのですが。
D850 8-15mmFisheye f13 1/640秒 ISO1000 瀬底島
そうそう、俯瞰で撮影する際に気をつけなければいけないのは、自分の影の写り込みです。
晴れてる日中に真下を向いて撮影すれば、100%自分の影が写ります。
どのメーカーのハウジングを使っているか、どれくらい腰がくびれているか、そんなことまでわかります。
さすがにそれは冗談ですが、普通に「人だ」ってことがわかるくらいには写りますよ。
なので、自分の影が写らないように真下を向いて撮影するには、曇りか雨の日を選ぶしかないんですよね。
そういう意味でも、晴れてない日のサンゴの撮影も面白いと言えそうです。
もちろん、真下を向いていなくても、俯瞰で撮る以上自分の影が写ってしまう可能性はあります。
それを避けるために、前回も書きましたが、僕は少し逆光気味で撮影していることが多いんです。
ただ、実際には、撮影したい方向を向いたらどうしても順光になるケースもあります。
あるいは、お昼前後だったら、太陽は真上にあって順光も逆光もありません。
そんな時は、僕はファインダーを見ながら、自分の影が写っていないか確認します。
太陽の光がキラキラ動いて、普通に見ていてもよくわからないことが多いので、手を振ってみたりします。
自分の手の動きに合わせて影が動いたら、それは自分の影が写っているということです。
僕がサンゴを撮影する時に手を振っているのは、別にテンションが上がっているわけではなかったんですね。
D850 8-15mmFisheye f11 1/320秒 ISO800 石垣島
②寄りと引き
①の続き。アングルの話です。
分けなくてもよかったかなと今さらながら思っていますが、まあ、いいでしょう。
僕はなんでもかんでも「寄れ寄れよれよれ」言う男として有名です。
でも、サンゴは違います。積極的に引きます。
むしろ、最近は引いて撮ることも多いんですよね。
D850 8-15mmFisheye f11 1/400秒 ISO1000 石垣島
もちろん、寄って撮ることもあります。
D850 8-15mmFisheye f13 1/500秒 ISO1000 伊江島
もうお気づきかと思いますが、引こうとするとどんどん俯瞰になっていきますし、寄ろうとするとあおり傾向になっていきます。
なのでやはり、①と分けるべきではなかったのかもしれません。
まあでも、寄りつつ俯瞰気味で撮ることもありますし、ひとまずここでは「引き」と「寄り」を比べてみましょうか。
- 引いた写真
どこまで引くかという判断はその時々ですが、最近はけっこう限界まで(水面まで)引く事も多いです。
・サンゴの群生の広がり
・サンゴの群生の密度
・地形の美しさ
そんなことを表現したくて、僕は引いています。
元々ジャーナリスティックな視点はないので、スカスカのサンゴをあえてそのまま写すために引いて撮る、ということは、普段はやらないですね。
もちろん、それが美しいとかカッコいいとか何か感じれば撮りますが。
D850 8-15mmFisheye f11 1/250秒 ISO640 沖縄本島 国頭村
- 寄った写真
サンゴに触れるか触れないかのところまで水深を落として、グッと寄った状態で撮影します。
ネガティブな言い方になってしまいますが、「引いたらちょっと寂しいな」という時にこちらを選択することが多いですかね。
全体を見渡すとサンゴの密度はそんなに濃くなくても、ある一部だけ異様にサンゴが密集しているということはよくあります。
そんな時は、まず寄るんですね。そのサンゴだけ撮るようなイメージで。
ただ、寄っただけだと、周りの「サンゴがあまりない」部分も写り込んでしまい、結果的に「サンゴモリモリ」というイメージが半減してしまうこともあります。
だから、さらに視点を下げるんですね。サンゴにぶつからないスレスレまで、体とカメラを落とすんです。
こうすることで、びっくりするくらい写るものが変わります。
所々露出していた岩肌が写らなくなるんです。
しかも、ここまでアングルを下げると自分の影が写る心配もなくなります。
中性浮力の練習、頑張りましょうね。
D850 8-15mmFisheye f13 1/400秒 ISO1100 沖縄本島 国頭村
「主役のサンゴを決める」というのもひとつの手です。
僕はよくやります。
サンゴだって生き物ですから。
自分が可愛い!と思った子を主役にして、そうでもない子を脇役にするのは、自然な流れではないでしょうか。
いつかは主役に躍り出たいものですね。
D850 8-15mmFisheye f11 1/250秒 ISO1600 沖縄本島 国頭村
③構図の調整
ここまでは、「どこから撮るか」というアングルの話でした。
それプラス考えないといけないのは、「画面の中にサンゴと海(と何か)をどう配置するか」ということです。
〇〇構図がどうこうという話はここでは省きます。
正直、サンゴの撮影をする上では、構図のセオリーは知らなくてもいいような気もするんです。
まあでも、勉強したい方はこのサイトの検索窓に「構図」と入れてみてください。
それなりに役立つ記事が出てくるはずです。
ちなみに最近気づいたのですが、サイト内の検索機能はけっこう便利ですよ。
とっても簡単に、自分の知りたい内容の記事だけ探すことができます。
さて、構図の知識なしで、どうやって構図を決めればいいのでしょうか?
個人的には、シンプルに、ファインダーやモニターを見ながら「どれくらいサンゴを入れて、どれくらい海を入れるか」を試行錯誤すればいいと思います。
サンゴの広がりを表現するためには…とかも、考えたかったら考えればいいですが、面倒なら考えなくてもいいです。
自分が心地いいと思う配分を見つけてください。
急に「感覚で撮れ」って言ってるみたいですね。何だか申し訳ない。そして上出らしくない。
まあでも、そんな撮影もいいじゃないですか。たまには小難しいこと抜きでいきましょう。
D850 8-15mmFisheye f11 1/500秒 ISO1000 伊江島
サンゴに限った話ではありませんが、水中ワイドを撮る時には、「縦位置で撮る」という選択肢も持っていて損はありません。
その辺りの話は以下の記事で書いていますので、興味があれば読んでみてください。
D850 14-24mm f13 1/250秒 ISO560 西表島
半水面なんていう選択肢もありますね。
撮影のコツは、「できるだけ波のない日にできるだけ大きなポートを使うこと」です。
自然条件と撮影機材しだい…これはコツと言えるんだろうか。笑
水中と陸上は光の屈折率が違うので、どちらも完璧にピントが合ってビシッと解像するということはありません。
だから絞り込んで、できるだけ被写界深度を深く取ることが多いのだと思います。
一般的には水中にピントを合わせるようですが、もし陸側に主題があるなら、個人的には陸の被写体にピントを合わせてもいいと思っています。
とは言っても、サンゴの場合のピントはやはり水中ですかね。
水中をちょうどいい明るさにしようとすると空が白飛びしてしまうので、僕は水中はちょっと暗くなるくらいで撮影して、後から現像で水中を明るくしています。
得意分野ではないので、この辺にしておきましょう。
D850 8-15mmFisheye f16 1/640秒 ISO1000 水納島
今日は、サンゴの写真を綺麗に撮影するシリーズの後編ということで、「構図とアングル」にスポットを当てて解説してきました。
写真の解説では、「画面のどこに何を配置するか」という構図の話が取り上げられがちです。
でも、「どこからカメラを構えるか」というアングルも、構図と同じくらい、あるいはそれ以上に意識すると効果的という話でした。
上から見おろしたり下から見あげたり、寄ったり引いたり、アングルは無限にあります。
それぞれのアングルの特徴や注意点を解説してきましたが、あまり難しく考えすぎず、泳ぎ回ってシャッターを切りまくりながら、好きなアングルを見つけるのがいいのかなと。
構図も、セオリーにとらわれすぎず、自分が「これだ!」と思うバランスを探してみてください。
サンゴの撮影は特に、相手が逃げない分、「何を入れて何を入れないのか」を自分でどうコントロールするのかにかかっています。
寄っても引いても、あおっても俯瞰でも、画面の四隅まで気を配ることは忘れないようにしたいですね。
それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました。
少しでも参考になれば嬉しいです!
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