そしてハゼはいなくなった ~撮影の鍵はアプローチ方法にあり~

 

こんにちは、上出です。

今日は、忘れた頃にやってくる、

「読者さんからの質問回答コーナー」

の第3回です。

 

今回の記事は、
数字やアルファベットが並ぶ、
専門的な内容ではありません。

水中写真初心者の方でも
さらっと読めるように書きますので、
最後までお付き合いくださいね。

 

今日のテーマは

「被写体への寄り方」

についてです。

 

まずは、Dさんからいただいた質問を紹介します。
(メールから該当部分だけを抜粋しています。)

あと、被写体へのアプローチ方法。

素敵なシチュエーションや被写体を見るとつい興奮してテンパります。

殺気を発してしまうようです。

心得ておくべきことがらなどもお聞きしたいです。

 

ご質問をいただいたDさん、ありがとうございました。
(ブログ掲載にもご快諾いただきありがとうございました。)

サメやマンタ、イルカやクジラなどの大物については、
それぞれの記事でアプローチ方法に言及しているので、
(これからもアップデートしていくので、)

今日はどちらかというと、
マクロ撮影の視点で解説していこうと思います。

では早速、回答に入っていきましょう。


(D7000 + Nikkor AF-S 105mm Micro + Z-240   f8 1/100秒 ISO200)

 

まず前提として、

被写体へのアプローチに失敗した

というのは、
どのような状況でしょうか?

 

おそらく皆さんが想像されるのは、

被写体が逃げてしまったor隠れてしまった

という状況だと思います。

 

ではなぜ、生き物は
逃げたり隠れたりするのでしょうか?

 

これは、自分に例えてみればわかるはずです。

僕だったら、

・危険を感じた
・恐怖を感じた
・びっくりした

といった時に逃げたり隠れたりします。

 

つまり、何が言いたいのかと言うと、

できるだけ危険や恐怖を感じさせないような、
できるだけビックリさせないような、

そんなアプローチが効果的なんじゃないの?
という事です。

 

まあここまでは、
当たり前の話と言っても良いかもしれません。


(D750 + Nikkor AF-S 105mm Micro + Z-240   f11 1/200秒 ISO160)

 

どの生き物でも基本的な考え方は同じですが、
ここでは一番皆さんが苦戦されていると思われる
ハゼを例にとって解説していこうと思います。

 

「わあい!憧れのヒレナガネジリンボウだ!」

と思ってカメラを向けて近づいたら、
シャッターを切る前に引っ込んでしまった…

という経験は、誰にでもありますよね。

そんな悲しい気持ちを、
タイトルにも込めました。笑

 

直接魚に聞いてみないと
びっくりしたのか危険を感じたのか
はわかりませんが、

きっと両方でしょうし、
厳密には分けずに進めていきます。

 

 

まず気を付けるべきは、
自分の呼吸です。

息を吸う時にうるさい人はあまりいませんが、
吐くときには、レギュレーターの構造上、
ブクブク音を鳴らしながら泡が出ます。

これは、小さな魚からしたら、
火山の噴火くらいに感じるのかもしれません。

遠くだったら

「あ、またか」

くらいで済むのでしょうが、

自分の家の近所で噴火したら
僕もとっさに隠れると思います。

 

僕たちにとっては当たり前の呼吸ですが、
音を発しながら泡で水を動かしているので、

当然これでびっくりする生き物もいます。

大事なのは、呼吸を安定させ、
息を吐くときに一気にゴボっと吐かない
ということです。

 

そして、これはもっと大切な事ですが、
息を吐きながら被写体に寄るのはお勧めしません。

ハゼからしたら、
噴火中の火山が近寄ってくるようなものです。

怖いです。

どんなに強気のハゼでも、隠れます。

これでTHE ENDです。

 

息を止めながらor吸いながら被写体に寄り、
いったん体の動きを止めて、
おちょぼ口の先から漏れ出るように息を吐きましょう。

この繰り返しで、少しずつ
被写体との距離を詰めていきます。


(D7000 + Nikkor AF-S 105mm Micro + Z-240   f5.6 1/250秒 ISO100)

 

もう一つ気を付けて欲しいのは、
自分の動きのスピードです。

セミナーの時にもよく、

「スローモーションで動いてください」

とお話します。

 

ハゼから見たら、僕たちは
ゴジラくらいのサイズ感です。

ゴジラがいきなり手をばっと上げたら、
そのまま叩き潰されるんじゃないかと思います。

生きた心地がしません。

 

これと同じことを、
ついつい僕らもやってしまいます。

よくあるのが、ストロボの
強さや角度を調整する時です。

サッと手をストロボに伸ばした瞬間に、
魚が巣の中に隠れてしまった…

という経験、ありませんか?

 

ストロボに限りませんが、
被写体にすでに寄っている状態で
手や頭を動かすときには、

ガイドさんに笑われるんじゃないか

なんて思わずに、

普段の1/10くらいのスピードで動いてみましょう。


(D850 + Nikkor AF-S 105mm Micro + Z-240   f4.5 1/250秒 ISO100)

 

 

ここまで解説してきた
「呼吸」と「スピード」を意識して、

じっくりじっくり時間をかけて
アプローチしてみてください。

僕も何度も失敗していますし、
今でももちろん失敗する事があります。

生き物との駆け引きを楽しむつもりで、
トライ&エラーを繰り返して欲しいなと思います。

 

Dさんの質問にも

素敵なシチュエーションや被写体を見ると
つい興奮してテンパってしまう

という悩みがありましたが、
これは正直に言って場数をこなすしかありません。

僕からは

「落ち着いてください」

としか言えませんが、
経験を積んでいくうちに、

素敵な光景に巡り合ったときに、
自分が何をすべきか判断できるようになります。

誰でもいつかはそうなりますので、
気長に続けていきましょう。


(D750 + Nikkor AF-S 105mm Micro + UCL-90 + Z-240   f16 1/100秒 ISO160)

 

それから、

「殺気で生き物が逃げちゃうんですよ…」

という相談も、実はよくいただきます。

「殺気」って言っても、
可愛いハゼを本当に殺そうとしてる人なんていません。

おそらく、
「撮りたい」という気持ちが前に出すぎて、
お邪魔している心が一時的に
どこかに行ってしまうんだと思います。

 

「この生き物はどこから撮ったら一番可愛いかな」
「この1ダイブ、まるまる君に捧げるよ」
「のんびりしてたとこ、邪魔してゴメンね」

そんな事を思いながらアプローチすれば、
自然と殺気もなくなると思うんですよね。

その先に、奇跡の瞬間が待っているのかもしれません。


(D7000 + Nikkor AF-S 105mm Micro + Z-240   f8 1/100秒 ISO160)

 

ここまで解説してきた寄り方とは関係なく、
ハゼでもスズメダイでもクジラでも、
そもそも寄りやすい個体とそうでない個体がいます。

これはパッと見で何か特徴があるわけではないので、
実際に被写体との距離をはかりながら
その個体の特徴を掴むしかありません。

「この個体は寄りにくいかも」

と思ったら、潔く諦めて
違う個体を狙った方がいい場合も多いです。

 

 

それから、僕の近所に住んでいる
ヤシャハゼやヒレナガネジリンボウに関しては、
明らかに水温が高い時の方が寄りやすいです。

なので、冬場はあまり撮影しません。

基本的なスキルを身につけた上で、
個体の性格や海の状況まで見極めて、
初めて被写体のパーソナルスペースに
入れてもらえるのかなと思います。

被写体へのアプローチひとつとっても、
奥が深いですね。

 

それでは、今日もここまで
読んでくださりありがとうございました。

少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです!

 

 

p.s.

 

以前こちらの記事↓
「ピントは気合いで合わせる? ~Nikon D850で水中マクロに挑戦!~」
で登場していただいたKさんから、
石垣島で撮影されたお写真が届きました。

完成度が高すぎて、震えました。笑
昨年12月からの成長スピードが半端じゃないです。

理由は色々あるのでしょうが、

現状の課題を明確にして、
その解決方法を自分で徹底的に調べて、
それでもわからない事は僕に聞いて、
ひとつひとつ丁寧に解決している、

という事なんだと思います。

月に何度かダイビングができる環境
というのも大きいですね。

PDCAを自分でガシガシ回しながら、
撮影機材もどんどん手についてくるので。

こういう報告は僕もとっても嬉しいので、
また楽しみに待っていようと思います。

(更新:2018.4.15)

 

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